改正特措法成立 罰則頼らず国民の理解求めよ
完了しました
感染拡大を抑止するには、国民が納得して対策に協力することが不可欠である。政府や自治体は罰則を振りかざすことなく、対策の重要性に理解を求めていくべきだ。
新型コロナウイルスへの対応を強化する新型インフルエンザ対策特別措置法と感染症法などの改正法が成立した。自民、公明両党や立憲民主党などが賛成した。
改正法は、感染防止策の実効性を高めるため、特措法や感染症法に罰則を新設することが主眼だ。休業や営業時間短縮の命令に応じない事業者や、入院を拒否した感染者に対し、過料を科すことができるようになる。
これまでは要請などにとどまっていたが、一定の強制力を持たせる改正だ。私権制限を強める以上、政府は、罰則の適用基準を国会答弁などで具体的に明示し、慎重に運用しなければならない。
政府は当初、入院拒否に対する罰則として「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という刑事罰を盛り込んだ。保健所の調査に応じない人に対しても、刑事罰を適用するとしていた。
ほかの法律の罰則とそろえたのだろうが、致死率が極端に高いわけではないコロナの特性を踏まえれば、厳しすぎるものだった。
自民党と立憲民主党が修正協議を行い、行政罰である過料に改めて、金額も引き下げた。刑事罰を削除したのは妥当な判断である。与野党が歩み寄り、合意に至ったことは評価できよう。
改正法は、緊急事態宣言前に予防策への協力を呼びかけるため、政府が「まん延防止等重点措置」を発令する規定を設けた。
広範囲に感染が拡大する前から、メリハリのある対策を講じるのは有効だ。国民生活や経済への打撃を軽減するためにも、機動的に対処することが必要である。
政府の立法作業が拙速だったことは否定できない。厚生労働省の審議会では、複数の専門家が「
改正法は4日間の国会審議で成立し、罰則の必要性や効果に関する政府答弁も説得力を欠いた。政府・与党が、新年度予算案より優先させる異例の対応をとったことも影響しているのだろう。
罰則が強調されると、感染を隠したり、感染者を差別したりする風潮を招くという指摘もある。政府や自治体は、病床確保や保健所の業務支援など、緊急性の高い施策に全力を挙げてもらいたい。