携帯料金改革 格安会社にも目配りが要る
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携帯電話大手の大幅な料金引き下げは歓迎したいが、格安携帯電話会社が窮地に陥るようでは困る。政府は利用者の選択肢を狭めないよう、公平な競争環境を整えてほしい。
政府の値下げ要請を受け、NTTドコモとソフトバンクは、データ容量20ギガ・バイト(GB)で、税抜き月2980円のスマートフォン向けプランを始める予定だ。
KDDI(au)も、1回5分以内の通話料無料のサービスを加えれば、他の2社と同じ価格になるプランを発表し、大手3社の新料金が出そろった。
3社横並びで、いずれも従来の7000円台から半額以下となる。各社とも、契約手続きはインターネットに限定するという。
値下げ自体は家計に朗報だが、業界で価格競争を活発化させる役割が期待されていた格安会社からは、悲鳴が上がっている。
格安会社は、電力など他業種の大手企業による参入のほか、独立系の小規模事業者も多い。自前の回線を持たず、大手にレンタル料を支払って営業している。
携帯大手の新たな価格は、格安会社を下回るケースがある。危機感から一段の値下げに踏み切る動きがあるものの、新規参入組には消耗戦に耐える体力は乏しい。
健全な会社まで
総務省はこれまで、大手3社の市場占有率(シェア)が9割近くを占めていることが料金の高止まりを招いたとの認識から、格安会社を育てて競争を促進し、低価格化を図る戦略をとってきた。
一方で、菅内閣が大手に強く圧力をかけ、一気に値下げが進んだことで、逆に格安会社の経営を圧迫する形になっている。今のままでは、政策のつじつまが合わなくなるのではないか。
新規参入を含めた各社が公平に競争できるよう、対応策を早期に具体化せねばならない。
総務省は、格安会社のコスト負担が大きい大手の回線レンタル料を、2022年度までに5割程度下げる目標を掲げている。格安会社の業界団体は、時期の前倒しと一段の低減を求めている。
適正価格を精査し、速やかに引き下げを実現するべきである。
利用者が、携帯会社の変更をしやすくすることも不可欠だ。総務省は、乗り換え後も同じ電話番号が使える「番号持ち運び制度(MNP)」の手続きの簡素化を検討している。利用者の事務負担を軽減する仕組み作りが重要だ。