施設の集団感染 検査の徹底で高齢者守りたい
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高齢者が入所する施設で新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)が急増している。対応を施設任せにせず、政府と自治体が支援を徹底しなければならない。
厚生労働省によると、最近の1週間に高齢者施設で発生したクラスターは95件で、飲食店の20件や医療機関の55件を上回った。入院先が見つからず、施設内で死亡する人も増えているという。
感染者を早期に発見するため、何よりもまず、PCR検査を拡充することが重要である。
政府は、緊急事態宣言が出ている10都府県に対し、施設職員への集中検査を3月末までに行うよう求めている。職員から入所者への感染が目立つためだ。施設への出入り業者や通いの利用者も含め、定期的な検査を実施すべきだ。
コロナ対策が十分に浸透していない施設もある。各都道府県は、感染防止の徹底を改めて呼びかけ、事業継続計画(BCP)の策定などを指導する必要がある。
感染者が出た場合、拡散を防ぐため、施設内の生活区域を分けるなどの初期対応が大事になる。
政府は都道府県に対し、感染者が出た施設に支援チームを派遣するよう求めている。各都道府県は専門の医師や看護師を派遣する態勢を早急に構築すべきだ。
ただ、感染症専門医は少ない。感染症に対応する国の指定医療機関のうち、専門医が在籍するのは35%程度だという。地域内で派遣できない場合は、国と連携して県を越えた広域派遣も考えたい。
感染者が認知症だと、病院側が
介護態勢の整備も大切だ。感染者が出ると、職員の多くが濃厚接触者となり、働けなくなる。一部の自治体では、事前に登録した応援職員を派遣している。こうした仕組みを各地で整えてほしい。
職員へのワクチン接種は、4月以降、高齢者と同時に始めるという。接種の機会をなるべく早く確保してもらいたい。
感染者が退院した後のリハビリや健康管理も課題となる。
開業医が感染症の専門家から助言を受け、施設に訪問診療している例もある。退院後の診察も受け持つため、早期退院が可能になる。こうした人材を活用し、診療から退院後のケアまで切れ目なく支える態勢づくりを急いでほしい。