五輪会長辞任 森氏の決断遅れが混乱広げた
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不適切な発言で、日本のイメージを損ねた責任は極めて重い。辞任の決断は、遅きに失したと言わざるを得ない。
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が、失言の責任をとって退く考えを表明した。組織委の緊急会議で「私がいることで、準備の妨げになってはいけない」と語った。
3日の日本オリンピック委員会(JOC)の会合で、森氏は「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と述べた。翌日に撤回する一方で、会長職にとどまる意向も示していた。
森氏の発言は、日本は性差別の残る時代遅れな国だ、という印象を国際社会に与えてしまった。五輪の運営を担う立場として、自覚を欠いていたのは明らかだ。
当初は不問に付そうとした国際オリンピック委員会(IOC)は、態度を一変させ、「絶対的に不適切だ」と非難する声明を出した。選手やスポンサー企業からの批判が強まったためだろう。
組織委が森氏を続投させようとしたことなど、大会関係者の判断も理解に苦しむ。また、菅首相は森氏の発言について「国益にとって芳しくない」と述べながら、進退に関わろうとしなかった。
組織委は、東京都とJOCが設立した法人とはいえ、国を挙げて取り組む大会の運営主体だ。
政府と組織委は、東京都と協力して国内外の信頼回復に努めねばならない。社会全体で女性の登用を進めていることを、粘り強く発信していく必要がある。
森氏は川淵三郎・日本サッカー協会相談役に後任を打診し、川淵氏もいったん受諾したという。
会長ポストは本来、理事会で選任する仕組みだ。手順を無視して森氏が後継者を指名したことに対し、与党からも「密室」での決定になるという批判が出た。
川淵氏はその後、辞退し、後任は白紙になっている。組織委の不手際で、混乱が一層広がっているのは残念でならない。
森氏が7年間、組織委のトップとして果たしてきた役割は大きい。IOCとの調整や、新型コロナウイルスの流行による開催計画の見直しなどに尽力してきた。
そうであっても、森氏が後継を指名するのは筋が違う。組織委は後任会長の選考委員会を設けるという。様々な意見を踏まえ、透明性のある形で決めるべきだ。
五輪を実現するまでの課題は、山積している。組織委は早急に体制を立て直し、安全な大会への道筋を示してもらいたい。