児童虐待最多 見守りの方法に工夫が必要だ
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新型コロナウイルスの流行で、児童虐待への対応が難しくなっている。家庭訪問を拒まれるケースが目立っており、見守りに工夫が必要だ。
全国の警察が昨年、児童虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した子供は、前年比9%増の約10万7000人にのぼった。10万人を超えるのは初めてだ。
暴行や傷害など、刑事事件として摘発したケースも過去最多の2131件だった。5年間で倍増しており、深刻な事態である。
背景には、虐待への意識が高まって通報が増え、警察が積極的に事件として取り上げるようになったこともあるのだろう。
コロナ禍で家族の在宅時間が延びた影響だとの指摘もある。外出自粛などによるストレスや経済的な困窮など、虐待を引き起こす家庭のリスクが増している。
感染の収束は見通せない。被害が深刻化しないよう、引き続き注意深く見ていく必要がある。
埼玉県美里町で昨年9月、生後3か月の女児が衰弱死した事件では、両親が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。町の担当者は、両親に30回以上、電話で連絡を試みたが、感染への懸念などを理由に訪問を拒否されたという。
近隣住民からは「大きな泣き声がする」との通報が寄せられていた。幼い命を救えなかったことを重く受け止め、関係機関で何が足りなかったのか検証すべきだ。
家庭訪問が困難になっている状況を踏まえ、対応策を練っている自治体もある。東京都江戸川区の児童相談所では、無料通信アプリ「LINE」のビデオ機能を使い、親や子供と話しながら様子を見守る取り組みを進めている。
親に電話をかけて子供に代わってもらい、安全が危ぶまれる場合には、直接会いに行く運用をしている児相もある。様々な方法で子供の安全を確認してほしい。
児相の態勢強化が急務である。厚生労働省は2018年度から、児童福祉司を5年間で2000人増やす計画を進めており、達成目標を1年前倒しするという。
増員は歓迎すべきだが、経験の浅い児童福祉司が増えているのが気になる。福祉司全体の半数は、勤務が3年未満の人たちだ。
虐待の対応には、配偶者への暴力や生活困窮に関する幅広い知識が求められるようになった。
厚労省は、家庭福祉を専門とする資格「子ども家庭福祉士」(仮称)の創設を検討している。こうした人材を活用し、広い視点から虐待防止に努めてもらいたい。