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日本経済は、本格的な回復に至っていない。実態を上回るような株価の上昇を手放しで喜ぶわけにはいかない。
東京株式市場で、日経平均株価の終値が3万円台を回復した。バブル期の1990年8月以来、約30年6か月ぶりだ。
2020年10~12月期の実質国内総生産(GDP)速報値が、前期比の年率換算で12・7%増と予想を上回る伸びとなり、日本の景気が底堅いと受け止められた。
トヨタ自動車やソフトバンクグループなど主要企業の決算が好調で、業績予想を上方修正する企業が相次いでいることも押し上げの要因となっているのだろう。
株価の上昇は、株を持つ人が消費を増やす「資産効果」があるとされるほか、企業が資金調達をしやすくなり、経済にプラスだ。
しかし、現状の急激な株高には注意が必要である。
背景にあるのは、世界的な金融緩和と財政出動による金余りだ。低金利による運用難の中、株式市場に投資資金が流れ込んでおり、東京市場の売買金額の約7割は外国人投資家が占めている。
日本銀行による上場投資信託(ETF)の大量の買い入れが、健全な相場形成を阻害しているとの指摘も根強い。
日本の実質GDPは、20年の年間でみれば4・8%減で、リーマン・ショック後の09年以来、11年ぶりのマイナスとなった。
新型コロナウイルスの感染拡大で今年1月に緊急事態宣言が再発令され、飲食やレジャー関連などのサービス業が打撃を受けている。1~3月期は、再びマイナス成長になるとの見方がある。
株価は、感染収束まで織り込んだ期待先行の面が大きい。
米製薬大手ファイザーのワクチンが承認され、近く接種が始まることが買い材料となっている。巨額の赤字に陥っている航空会社や鉄道会社などの株価も堅調だ。
経済の動きと
政府・日銀は市場の過熱を警戒しつつ、株価の維持に向け、経済の底上げに地道に取り組むしかない。当面は、感染抑止に全力を挙げ、サービス業を中心とする事業者の支援に手を尽くすべきだ。
中長期的には、デジタル化や温室効果ガスの排出を減らす脱炭素などへの民間投資を促し、経済の実力を示す潜在成長率の引き上げに努めることが重要である。