ワクチン接種 情報公開で不安解消に努めよ
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新型コロナウイルス対策の決め手とされるワクチンの接種が、国内で始まった。より多くの人に受けてもらうため、副反応などに関する情報公開と丁寧な説明が不可欠である。
接種は、まず医療従事者4万人に実施し、4月以降、高齢者約3600万人を対象にした接種を開始するという。一般への接種は、今夏にも始まるといわれる。
使用される米ファイザー社のワクチンは、新型コロナの発症率を95%減らすことが確認されている。一方、半数以上に頭痛や疲労感、15%に発熱などの副反応が出るとされる。多くは数日以内で治まるが、心配な人は多かろう。
医療従事者への先行接種では、2万人について、その後の副反応を追跡調査し、公表する計画だ。国民の不安を
都道府県ごとに副反応の相談窓口を設けるほか、大学病院などで専門の診療を受けられる態勢も整えるという。重大な副反応が確認された場合は事実を公表し、注意を促すことが重要だ。
短期間に多数の国民に接種するという前例のない事業だけに、実施主体となる市区町村の負担は大きい。接種にあたる医師の確保ができていない地域もある。自治体と地域の医師会は緊密に連携し、調整にあたってほしい。
政府は当初、広い会場での集団接種が原則だと説明していたが、先月末から診療所での個別接種も推奨し始めた。受ける人にとってかかりつけ医による個別接種は安心感がある一方、自治体はワクチンの管理や輸送が大変になる。
受けられる人が2割近く少なくなる可能性も浮上している。政府は、ワクチン1瓶あたり6回分の接種を見積もっていたが、特殊な注射器を使わないと、5回分しか打てないことが判明した。
接種会場に何人分のワクチンが到着するかわからなければ、自治体の準備作業は立ちゆかない。こうしたお粗末なミスが再び起きないよう、政府はチェックを徹底しなければならない。
世界的なワクチンの供給不足で、日本への入荷時期が不明確なことも不安材料になっている。欧州連合(EU)が先月、ワクチンの輸出制限措置に踏み切ったことで、各自治体に配分する計画が立てられなくなっているという。
接種は長期に及ぶため、今後もこうした急な方針転換やトラブルが予想される。政府と自治体はしっかり意思疎通を図り、現場が混乱しないように努めるべきだ。