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偽版画大量流通 美術市場揺るがす背信行為だ

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 美術品取引へ大きなダメージを与える事態だ。作品流通に関わる業界全体で混乱を収拾し、安心して売買できる体制作りを急がねばならない。

 著名な日本画家らの版画の偽作が、国内で大量に流通していたことが分かった。日本現代版画商協同組合などの調査で、すでに亡くなった平山郁夫や東山魁夷、有元利夫の3氏らが手がけた16作品の偽作が確認された。

 関西の画商が調査に対し、約8年前から専門工房に複製作りを依頼し、販売していたことを認めたという。工房の経営者は、本紙の取材に「金に困って、安易に引き受けた」と話している。

 美術市場への信頼を失墜させる行為だと言わざるを得ない。画商は本来、責任をもって作品を流通させるべき立場にある。加えて、技法などを熟知する工房が関与していたことは極めて深刻だ。

 工房経営者は「40作品を20枚ずつ刷った」とも語った。事実なら、判明した16作品以外にも多数の偽作が存在することになる。警視庁は著作権法違反容疑で捜査を進めている。偽作の特定をはじめ、早急に全容を解明してほしい。

 百貨店は1点あたり数十万円から数百万円で販売しており、作品の回収に追われている。美術商の全国組織は専門機関に依頼し、真偽の鑑定にあたるという。美術業界は流通ルートをたどり、購入者らに誠実に対応すべきだ。

 信用を取り戻すためには、業界慣行を見直す必要もあろう。

 版画作品は、事前に枚数を決めて刷り、通し番号や画家本人らのサインを余白に記入する。それらが真作の保証となる。後から刷り増せないよう、原版を廃棄するなどの処置も行うため、鑑定の必要性は低かったとされる。

 そのルールをないがしろにした偽作が発覚した以上、業界として、常に鑑定に応じる仕組みを設けなければなるまい。真作と証明する文書を発行するなど、新たな手立ても講じるべきではないか。

 不祥事が判明した場合、業界団体が進んで公表し、再発防止策を打ち出す姿勢も不可欠だ。

 美術品取引では版画に限らず、古くから偽作問題が絶えない。素人では手を出しにくいイメージを払拭ふっしょくしなければ、幅広い層に作品を届けることは望めない。

 国内の美術市場は、世界的に見れば小規模とされ、国は近年、取引の活性化策を検討している。その前提は透明性を高めることだ。業界の取り組みを注視し、体質改善を後押ししてもらいたい。

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1857479 0 社説 2021/02/21 05:00:00 2021/02/21 05:00:00

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