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放送行政の公正さに疑念を生じさせる深刻な事態である。特定の企業からの接待が繰り返された背景や政策決定への影響について、政府は調査を尽くさねばならない。
菅首相の長男が勤務する放送関連会社「東北新社」からの接待問題について、総務省が調査結果を公表した。国家公務員倫理規程に違反する疑いがある会食は2016年以降、延べ38件に上った。
公務員と利害関係者との会食は、癒着の温床となり、行政に対する信頼を揺るがしかねない。規範意識の欠如が目に余る。
調査によると、谷脇康彦総務審議官ら幹部4人に加え、情報流通行政局の課長ら8人が接待を受けていたことがわかった。ほかに、山田真貴子内閣広報官も総務審議官当時に会食していた。
事務方ナンバー2の審議官をはじめ、衛星放送業務を担う歴代局長、課長らが接待対象となっていた。利益供与が広がっていたことへの
公共財産である電波を配分する総務省は、利害関係のある放送関連会社との癒着が疑われるような接触は避けなければならない。関係者を厳正に処分し、接待が横行した背景を調べる必要がある。
野党は衆院予算委員会で、一連の接待による放送行政への影響を追及した。東北新社の子会社が手がけるBS放送の事業認定は昨年12月に更新期を迎えており、幹部4人が接待を受けた昨年10~12月と時期が重なるという。
武田総務相は「放送行政が
総務省幹部は他の放送事業者との会食を否定している。ではなぜ、東北新社だけから接待を受けたのか、疑念は深まるばかりだ。
長男は首相が総務相時代に秘書官を務めており、その人脈を利用したのではないか。官僚側も父親である首相を意識して断れなかったとみられても仕方あるまい。
首相は「長男が関係し、結果として公務員が倫理法に違反する行為をしたことを、心からおわびする」と陳謝した。一方で、「長男と会社の話は一切していない」と述べ、関与を否定した。
「長男は別人格だ」という首相の認識自体に問題がある。行政の責任を負う立場にある以上、家族も含め、疑念を持たれないよう行動を慎むのが当然だ。首相は事実関係をつまびらかにすべきだ。