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大震災10年 惨禍の教訓を次代につなごう

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◆復興の成果と課題を検証せよ◆

 東日本大震災から10年を迎えた。死者・行方不明者は2万2000人を超える。震災の体験を語り継ぎ、次代の教訓としなければならない。

 巨大な津波が海辺の街をのみ込んだ。家や車が押し流され、人々が逃げ惑う。壊滅的な打撃を受けた被災地の姿が脳裏によみがえる。

◆記憶の風化を防ぎたい

 政府主催の追悼式が11日、東京都内で行われる。今年が最後で、天皇、皇后両陛下が臨席し、天皇陛下がお言葉を述べられる。

 地震発生時刻の午後2時46分、亡くなられた方々への哀悼の意を込めて、黙祷もくとうささげたい。

 岩手、宮城、福島の3県で進められてきた生活基盤整備がほぼ終了し、住宅や道路は復旧した。震災後に造成された土地に新しい家や施設が立ち並び、惨禍の痕跡さえ見つけられない地域もある。

 防潮堤の建設や造成した高台への集団移転などの複合的な対策によって、被災地で暮らす人々の安全性は格段に高まった。

 あの日、津波に襲われた被災地を見て、再生はかなわないと感じた人も多いだろう。30兆円超の予算を投じた事業は、被災者のひたむきな努力と相まって、確かな成果を残したと言える。

 震災を機に、全国の自治体がハザードマップや避難計画の策定などを進めてきた。あらわになった防災の弱点を克服するためだ。

 それでも、地震や豪雨災害が起きる度に、新たな課題が浮上する。ハードとソフトの両面から減災対策を追求し、災害に強い国づくりを進めなければならない。

 時がつにつれ記憶の風化は進む。読売新聞の世論調査では、被災地への国民の関心が薄れていると感じる人が9割を超えた。

 教育現場で震災の教訓を伝えることが大事だ。資料保存の取り組みや語り部活動を支えたい。記憶を次の世代に伝え、未曽有の体験と向き合い続けることは、将来の被害軽減につながるはずだ。

◆災害に強い街づくりを

 震災後、政府は「創造的復興」の理念を強調した。単なる復旧ではなく、地方創生を先導するような復興を図るとの趣旨だった。

 現実には多くの被災地で、住民が避難先から戻らず、造成地に空き地が広がっている。人口減と高齢化が進み、基幹産業である水産加工業の回復は滞っている。

 理念の実現を阻んだ要因は、どこにあるのか。国は復興事業の成果と課題を検証してほしい。

 当時の民主党内閣は、復興事業費の全額を国費で賄う措置を取った。自治体に重荷を負わせないという狙いだったが、逆に、事業内容の吟味が甘くなり、肥大化につながったことは否めまい。

 国費で作られた施設の維持管理費は今後、自治体が支出することになる。高齢化の進展に伴って、社会保障費も増えるだろう。自治体が財政負担に耐えられるのか、十分な検討が必要になる。

 住民との合意が不十分なまま、巨大な防潮堤が建設された街もある。海が見えなくなった古里に、喪失感を覚える人は多い。

 災害の発生直後は、生活再建に追われる被災者が街づくりに異を唱えることは難しい。かといって、合意を尊重して復興に時間をかけすぎれば、避難先から戻れなくなる人が増えてしまう。

 このジレンマを解消するには、自治体と住民が平時から復興のあり方を話し合う「事前復興」の取り組みが重要になる。

 被害想定を踏まえ、被災した場合の街づくりの方向性を定め、指揮命令系統や手順を決めておく。事前に青写真を描くことは、円滑な復興の実現に資するだろう。

 東京電力福島第一原子力発電所事故が起きた福島県は、再生への道筋を見いだせずにいる。

 約3万6000人の避難者が今も県内外で暮らしている。放射線量が高く、住民が戻れない帰還困難区域はバリケードで封鎖され、朽ちた家が取り残されている。

◆福島再生も地域主体で

 原発の廃炉には30~40年を要する。溶融燃料を取り出す作業は思うように進まず、処理水の海洋放出は風評被害への懸念から、実施の見通しが立っていない。

 国はロボットなどの研究施設を沿岸部に集積した。新たな産業を創出して日本の競争力を高め、成果を世界に発信するという。すでに500億円超を投じたが、目標としている地域の雇用に結びついているとは言い難い。

 国が事業の先頭に立つのは当然だが、理想を追い求めるあまり、住民を置き去りにしては、再生はおぼつかない。地域の声に耳を傾けながら進めることが重要だ。

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1901956 0 社説 2021/03/11 05:00:00 2021/03/11 05:00:00

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