ミャンマー情勢 軍の暴挙抑える介入が必要だ
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ミャンマーで軍の弾圧による犠牲者が増えるなか、国際社会は有効な手を打てずにいる。地域の安定を脅かす事態に発展しないよう、介入を強めねばならない。
クーデターを起こした軍への「不服従運動」を続ける国民に対し、治安部隊は発砲を
最大都市ヤンゴンの一部には戒厳令が敷かれ、軍が全権を握った。警察に代わって治安維持の前面に立ち、27日の建軍記念日までにデモを鎮圧する狙いなのだろう。
軍政下の1988年には、軍が民主化を求める国民に無差別発砲し、数千人が死亡したとされる。惨事を繰り返してはならない。
クーデターで政権を追われた国民民主連盟(NLD)側は「臨時政府」を樹立し、対抗する構えだ。軍に反発する少数民族の武装勢力との連携も模索している。
このまま放置すれば、流血の拡大は避けられない。軍と武装勢力の衝突が激化した場合は、事実上の内戦となり、難民が周辺国に大量に流出することもありうる。
もはや内政問題にとどまらず、地域の平和と安定に関わる深刻な事態に陥ったのは明白だ。国際社会の関与強化が不可欠である。
米欧は軍への制裁を段階的に強め、日本も経済支援の縮小に動いているが、中国とロシアの反応は鈍い。国連安全保障理事会は、拒否権を持つ中露の反対により、ミャンマーへの圧力策を打ち出せない状態が続いている。
中露は、「内政問題」を理由とした不介入が軍の暴力の容認につながり、事態悪化を招いた責任を免れることはできない。
ミャンマーが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)も存在価値が問われている。足元を揺るがす問題であるにもかかわらず、外相会合で現状への懸念を示しただけで役割を果たせていない。
ASEAN憲章は、「地域の平和、安全、安定」を最優先の目標に掲げている。「内政不干渉」や「全会一致」の原則に縛られているだけでは、ASEANの影響力自体が損なわれかねない。
ASEANは首脳会議を早急に開き、明確なメッセージを発する必要がある。軍に暴力の即時停止を求め、軍とNLD側の対話を仲介するなど、事態の正常化に向けて主体的に動いてもらいたい。
日本の対応も正念場を迎えている。ミャンマーやASEANとのパイプを通じて、平和的解決へ働きかけを強化すべきだ。