完了しました
原子力発電所の再稼働は、国のエネルギー政策を左右する問題である。裁判所によって異なる判断が示されるたび、電力会社が
茨城県東海村にある日本原子力発電の東海第二原発について、水戸地裁が18日、運転差し止めを命じる判決を言い渡した。「原発そのものの安全性に問題はないが、自治体が策定する地域住民の避難計画が不十分だ」と指摘した。
東海第二原発は東日本大震災以降、運転を停止している。原子力規制委員会は、震災後の新規制基準に適合すると判断している。防潮堤設置などの安全対策工事は、2022年末に完了予定だ。
東海第二原発は首都圏にある唯一の原発で、半径30キロ圏内には、全国の原発で最も多い約94万人が住んでいる。人口密集地域が含まれており、判決は特段の配慮が必要だと判断したのだろう。
避難計画の策定は遅れている。原子力災害対策特別措置法は、周辺の14自治体に計画づくりを求めているが、水戸市や日立市など9自治体では策定されていない。
自然災害は、いつでも起こり得る。自治体は実効性ある避難計画の策定を急がねばならない。
ただ、電力会社にとっては、避難計画に関する自治体の対応で再稼働の可否が変わるのは不合理だろう。判決の効力は確定まで生じないが、再稼働への道はさらに厳しくなったと言わざるを得ない。原電側は控訴する見通しだ。
一方、愛媛県にある四国電力伊方原発3号機については、広島高裁が同じ18日、運転を認める決定をした。広島高裁の別の裁判長が運転差し止めを命じた仮処分決定が一転して取り消された。
決定は、伊方原発近くに活断層はないとした四電の調査に不合理な点はないと評価した。130キロ離れた阿蘇山の噴火の影響に関しては、四電の想定を過小とは言えないと指摘した。科学的知見を踏まえた妥当な見解である。
決定は、「独自の科学的知見を持たない裁判所が、住民らに具体的危険があると推認するのは相当ではない」とも言及した。
東京電力福島第一原発事故の後、多数の訴訟や仮処分の裁判で原発の安全性が争われている。運転を認めない司法判断は、今回の東海第二原発の判決までに7件あったが、大半がその後の裁判で、運転容認に覆っている。
再稼働の適否を判断するにあたっては、拘束力のある最高裁の判例が必要ではないか。