五輪海外客断念 安全の追求が開催国の責務だ
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失うものは大きいが、安全な大会を実現するためには避けられない決断だと言えよう。新型コロナウイルスの感染再拡大を食い止め、開催をより確実なものとしたい。
東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が、海外からの一般観客の受け入れを断念することで、政府や東京都、国際オリンピック委員会(IOC)などと合意した。海外向けに販売した63万枚のチケットは払い戻すという。
五輪期間中の訪日客は100万人規模と見込まれていた。チケットの解約で、大会収入は大幅に減る。航空や宿泊などの業界が打撃を受け、国際交流の機会も失われよう。目指していた「完全な形」での開催はかなわなくなる。
それでも現状をみれば、海外客を招くリスクはあまりに大きい。変異したコロナウイルスが世界中で猛威を振るい、感染者数は累計で1億2000万人を超えた。
日本に入国後、厳しい行動制限がかかる選手らとは異なり、観客は動向を把握することすら難しい。海外客の受け入れ断念により、変異ウイルスの流入に伴う感染急拡大という恐れは小さくなる。
ただ、これで開催が確約されたわけではない。大会を機に感染が拡大するとの懸念から、中止や延期を求める声は依然、根強い。感染対策を更に強化し、不安要素を着実に取り除かねばならない。
当面は、感染の「第4波」を抑え込むことが最重要課題となる。検査を徹底し、病床や医療体制を戦略的に確保することが大切だ。国と自治体が連携し、ワクチン接種も円滑に進める必要がある。
各種競技のテスト大会が4月に再開される。競技会場だけでなく、移動や宿泊など様々な場面で感染対策を入念に点検し、陽性者が出た際の対応力を高めてほしい。
組織委は4月中に国内観客の収容人数の上限を示すという。感染状況を見極め、柔軟に対応すべきだ。来日する数万人の海外選手と大会関係者に、感染対策の徹底を図ることが重要になる。
来日できない人も何らかの形で祭典の
組織委で不祥事が続いている。森喜朗・前会長の辞任に続き、開閉会式の演出統括者がタレントを侮辱する案を出したとして辞任した。五輪の理念を体現する式典には、世界の注目が集まる。早急に体制を立て直さねばならない。
聖火リレーが25日に始まる。応援する側も感染対策を心がけ、4か月間の日程を乗り切りたい。