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新型コロナウイルスの感染拡大が地価の上昇にブレーキをかけたが、影響の度合いは用途や地域によってまちまちだ。政府は、その動向をきめ細かく点検する必要がある。
国土交通省が発表した1月1日時点の公示地価は、全ての用途の全国平均で前年より0・5%下がり、6年ぶりに下落に転じた。商業地は7年ぶり、住宅地は5年ぶりの値下がりだ。
地域別では、東京、大阪、名古屋の3大都市圏すべてで、商業地、住宅地ともに下がった。
地価は、経済の活力を表す指標でもある。日本はバブル崩壊後、「資産デフレ」に苦しんだ。下落が長引くことは望ましくない。
低下が目立ったのは、景気を反映しやすい商業地の価格だ。
下落率の上位には大阪市中央区の地点が並んでいる。道頓堀など、以前は訪日外国人客で
東京では、銀座や歌舞伎町を始め、飲食店が集積する地域で落ち込みが激しかった。
各地でホテル向けの土地需要が減退し、地方の観光地でも値下がりした場所が多い。
ただ、全体の下落率は、2008年のリーマン・ショック後よりも小幅にとどまっている。
株式市場は好調で、世界的な金融緩和による「金余り」で不動産に資金が流れやすい状況は変わっていないためだろう。
東京・丸の内といったオフィスが中心の地域は、地価があまり下がっていない。地方の主要都市である札幌、仙台、福岡では再開発などによる上昇が続いている。
スキーリゾート・ニセコで知られる北海道倶知安町には、伸びが鈍化したとはいえ、なお20%以上値上がりした地点がある。政府は、外資などによる投機的な動きには目を光らせてほしい。
住宅地の値下がりは、商業地と比べれば小さかった。
埼玉、千葉、神奈川の東京に近接する地域などでは、値上がり傾向が継続している。新幹線通勤が可能な別荘地の長野・軽井沢や、静岡・熱海の駅周辺でも、前年比でプラスの地点があるという。
総務省によると昨年7月以降、東京都で転出者が転入者を上回っており、テレワークの普及が影響している可能性がある。
各自治体や企業が、働き方や働く場所を多様化させる方策に知恵を絞り、東京一極集中の是正につなげていくことが重要だ。