みずほ障害報告 「顧客第一」を疎かにするな
完了しました
相次ぐシステム障害で被害が拡大した原因は、危機管理の甘さにある。顧客軽視の企業体質を改め、信頼の回復に全力を挙げねばならない。
みずほフィナンシャルグループ(FG)は、傘下のみずほ銀行で2月末から4回発生したシステム障害の原因と再発防止策に関する報告書をまとめた。
みずほFGの坂井辰史社長は記者会見で、「システムそのものだけではなく、開発・運用に様々な問題があった」と謝罪した。
現金自動預け払い機(ATM)が約4300台停止した2月28日の大規模障害では、キャッシュカードや通帳がATMに取り込まれる被害が約5200件に上った。多くの顧客が長時間、店頭で待たされる事態を招いた。
顧客対応が
報告書によると、初動で原因についての情報集めが中心になり、被害の全体像の把握と営業店への指示が後手に回ったという。
大規模なATM障害が休日や夜間に起きることを想定した対処の手順が整っていなかったため、行員が駆けつけるのが遅れた。
問い合わせ窓口となる部署と、ATMを運用する部署との連携も不足していたとしている。
金融庁が金融機関に強く求めている「顧客第一」の姿勢が足りなかったと言わざるを得ない。
みずほ銀は、障害時にキャッシュカードや通帳を原則、返却するように仕様を変更するほか、SNSなどによる情報収集の徹底も行うという。トラブルで、顧客が迷惑を被ることがないよう、万全の対策を講じてもらいたい。
システムの運用も、改めて見直す必要がある。
みずほ銀は2002年と11年に大規模障害を起こし、その反省を踏まえて基幹システムを19年に全面刷新したばかりだ。
ところが、その後、システム制御を担当する専門人材を減らしたほか、開発会社の常駐サポートを縮小していたという。
システムは構築しただけで終わりではなく、その安定性が何より重要だ。コスト削減を優先したとすれば、理解に苦しむ。
安全な管理に向けて人員や体制を再び強化するとともに、訓練を重ね、備えを万全にすべきだ。
みずほFGは報告書を金融庁に提出した。金融庁は、再発防止策が十分か、4件の障害に共通する問題や経営責任はないか、といった点を検証し、行政処分を検討するなど厳正に対処してほしい。