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世界の首脳が、気候変動の脅威について認識を共有したことを歓迎したい。今後は、温室効果ガス排出削減への行動が問われることになる。
米国主催の気候変動サミットがオンライン形式で開かれ、菅首相は、温室効果ガスの排出量を2030年度までに13年度比で46%減らす目標を表明した。従来の26%から大幅に引き上げた。
バイデン米大統領は、30年に05年比で50~52%減とする新目標を発表した。米国が、温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」から離脱したトランプ前政権の姿勢を転換し、気候変動問題で世界を主導する意義は大きい。
国際協調の流れを一段と加速させることが望ましい。
世界最大の排出国である中国の習近平国家主席は、30年までに二酸化炭素(CO2)排出量を減少に転じさせ、60年には実質ゼロにすることを目指すと述べたが、新しい目標は示さなかった。
温暖化の抑止には、世界の排出量の3割を占める中国の削減が不可欠だ。日米欧が、中国の取り組みを促すことが重要である。
16年に発効したパリ協定は約190の国・地域が、それぞれ自主的に削減目標を定める枠組みだ。日米欧は50年に実質ゼロにすると約束しており、30年はその中間目標の位置づけとなる。
各国は、新たな目標の設定を受けて、産業や家庭など、分野ごとの削減計画を国連に提出するという。実現可能な道筋を、早期に明示してもらいたい。
日本は「46%削減」を掲げたが、政府は前提となる電源構成などの根拠を明らかにしていない。19年度までの6年で14%減らしただけで、残りの期間で32%分を削減せねばならない計算だ。
首相は、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの活用と省エネルギーを中心に、大胆に対策を講じていくと説明した。
太陽光発電は、平地が少ない日本では適地が限られるという。住宅や工場、公共施設などの屋根を有効に使う工夫が要る。
政府が期待する洋上風力は、環境への影響を評価する手続きなどで運転開始までに8年程度かかるとされる。早期稼働できるよう規制緩和を検討する必要がある。
30年度まで、あと9年しかない。水素利用やCO2の回収・貯留といった技術革新は、あてにしにくい。CO2を出さない原子力の活用が有力な選択肢となろう。政府は、安全性が確認された原発の再稼働を強く後押しすべきだ。