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ハンセン病 差別の歴史を風化させるな

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 ハンセン病患者への国の隔離政策を「違憲」とした司法判断が示されてから20年になる。差別と偏見の歴史を再び繰り返すことがないよう、改めて考える機会にしたい。

 国立ハンセン病療養所の元患者ら127人が、国の隔離政策で人権を侵害されたと訴えた裁判で、熊本地裁は2001年5月11日、国に計18億円の賠償を命じた。

 元患者らが受けた苦難に初めて光があてられ、政府や国会による謝罪と、被害実態の解明につながった意義は大きかった。

 ハンセン病は、らい菌により末梢まっしょう神経や皮膚が侵される感染症だ。感染力は弱く、薬で治癒するようになった後も、らい予防法が廃止される1996年まで約90年間、隔離政策は続けられた。

 隔離を徹底したことで、恐ろしい伝染病だという誤った認識が固定化した。療養所では偽名を使うことを余儀なくされ、断種や妊娠中絶を強要された人もいた。国の政策が、患者やその家族に深刻な被害をもたらした事実は重い。

 隔離政策が終わった後も、多くの元患者は療養所に残らざるを得なかった。根強い差別で故郷に戻れない人や、病気の後遺症で介助が欠かせない人がいたためだ。

 療養所に暮らす入所者の平均年齢は現在、86歳を超え、高齢化が進む。多い時で1万人を超えていた入所者数は、約1000人にまで減っている。入所者を孤立させず、安心して生活できる環境を今後も守っていく必要がある。

 入所者で組織する自治会は、高齢化で活動を休止するところも出ている。処遇改善などを求める入所者の声を、施設側に届ける態勢づくりが急務だと言えよう。

 隔離政策の実態を語り継ぎ、どのように後世に伝えていくかも考えなければならない。自らの経験を語れる人は減りつつある。当事者と交流してきた地域住民を語り部として育成するなど、被害を風化させないことが大切だ。

 療養所の敷地内に保育園を誘致したり、医療施設を一般の人も受診できるようにしたりして、地域との共生を模索しているところもある。国や自治体は、こうした動きを後押ししてもらいたい。

 感染症に対する無知は、偏見につながる。コロナ禍では、感染した患者へのバッシングやいじめが問題になっている。

 政府は、ハンセン病に関するこれまでの啓発活動を検証する有識者会議を設けるという。長く差別を生んできた原因を見極め、効果的な対策を打ち出してほしい。

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2028932 0 社説 2021/05/04 05:00:00 2021/05/04 05:00:00

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