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建設石綿判決 対策怠った国の責任は重い

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 アスベスト(石綿)の危険性は早くから指摘されていたのに、必要な対策を怠ったことで被害が拡大した。国は最高裁判決を重く受け止め、被害者の救済を急ぐべきだ。

 建材に使われた石綿の粉じんを作業中に吸い込んで中皮腫や肺がんになったとして、元建設労働者らが損害賠償を求めた訴訟で、最高裁が国と建材メーカー側の責任を認める判決を言い渡した。

 判決は、国が1975年から2004年、作業員に防じんマスクの着用などを義務づけなかった点を違法とする初判断を示した。個人事業主として仕事を請け負い、労働者保護の対象外とされていた「一人親方」の救済も認めた。

 日本は海外に比べて、石綿の規制が大幅に遅れた。判決が、「国が権限を行使しなかったことは著しく合理性を欠き、違法だ」と指摘したのは当然である。

 建材メーカーの責任も重い。判決は、石綿の危険性を建材に表示すべきだったのに、それを怠ったと認定した。現場では危険性が認識されず、意識せずに石綿の粉じんを吸い込んだ労働者が今、重い病に苦しんでいる。

 安価で耐火性に優れる石綿は、1970~90年代に大量に輸入され、多くの建材メーカーが吹きつけ材や断熱材に使用した。建設作業員は現場で様々な建材を扱っており、どの建材が原因で病気になったのか、特定が難しかった。

 判決は、「複数メーカーによる共同の不法行為が成立する」という論理で賠償責任を認めた。最高裁は、積極的に被害者の救済を図ろうとしたのだろう。

 石綿被害の潜伏期間は15~50年と長く、被害者は今後さらに増えるとみられる。今回の判決を踏まえ、訴訟に参加していない被害者も救済できる制度が不可欠だ。

 判決を受け、与党プロジェクトチームは、国が被害者1人あたり最大1300万円を支払う内容の統一和解案を取りまとめた。被害救済のため、給付金制度を創設することも検討している。原告側は受け入れる方針だ。

 与党は建材メーカー側にも統一和解案への参加を呼びかけたが、メーカー側は難色を示したという。原告の元労働者の7割は、すでに亡くなっている。国は早期の被害者救済に向け、メーカーとの協議を急ぐ必要がある。

 国の対策が遅れたことで、薬害や公害の被害が拡大する例は後を絶たない。国の過ちで、国民の健康と安全が危険にさらされる事態を繰り返してはならない。

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2059408 0 社説 2021/05/18 05:00:00 2021/05/18 05:00:00

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