完了しました
横断歩道や交差点の近くにあるバス停は、停車したバスの大きな車体で死角ができるため、事故が起こりやすい。危険度の高いバス停から優先的に移設を進めてもらいたい。
国土交通省は、全国に約40万あるバス停について、事故のリスクを判定する調査を実施した。横断歩道や交差点との距離などを基準として、危険度の高い順にA、B、Cの3ランクに分けた。
それによると、危険なバス停はAが1615か所、Bが5660か所、Cが2920か所の計1万195か所に上った。Aの大半は停車したバスの車体が横断歩道をふさぎ、他の車のドライバーや歩行者の視界を遮っていた。
まずはAランクのバス停から速やかに移設を進め、事故の要因を取り除くべきだろう。
ただ、バス停の移設は難航しがちだ。自宅前にバス停が移ってくることを嫌がる地権者が多く、バス会社や警察、自治体との協議はなかなかまとまらない。
協議の場に地元自治会を加え、移設先の選定や地権者との交渉に住民が主体的に取り組んだ地域がある。住民同士が話し合い、地権者の同意もスムーズに得ることができたという。こうした手法を生かし、円滑に協議を進めたい。
事故は、危険度のランクを問わずに起きている。広島県では2018年、横断歩道を渡っていた男子中学生が、停車したバスを追い越した車にはねられ、けがをした。17年には埼玉県で、バスの対向車に高校生がはねられている。
二つのバス停は、いずれもAランクではなかった。学校の通学路付近や登下校時は、子供が被害に遭う可能性が高まる。こうしたバス停についても、早期の移設を検討してほしい。
バス停付近の事故は、バス会社が重大事故の当事者にならない限り、国への報告義務はない。乗降客や歩行者が事故に遭いそうになり、バス運転手がひやりとした事例を自治体や警察と共有し、事故防止につなげることが重要だ。
周囲を走行する車に乗降客や歩行者への注意を促すステッカーをバスの車体に貼ったり、車内アナウンスで降車時には気をつけるように呼びかけたりしているバス会社もある。こうした地道な対策を浸透させることが大切である。
バスの安全な運行には、周囲を走行するドライバーの理解も不可欠だ。バス利用者には、マイカーの運転が難しくなった高齢者も多い。改めて歩行者に優しい運転マナーを心がけたい。