読売新聞オンライン

メニュー

東京五輪開幕へ コロナ禍に希望と力届けたい

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

◆安全な大会へ万全の感染対策を◆

 新型コロナウイルスの流行に伴う緊急事態宣言が発令された中で、約半世紀ぶりの東京五輪が開幕する。困難に立ち向かう努力の大切さや尊さを世界に伝えたい。

 国内で五輪が開催されるのは、冬季の長野大会以来、23年ぶりだ。約200か国・地域から1万人以上の選手が集結し、8月8日までの17日間、過去最多の33競技で熱戦を繰り広げる。

 ◆幾多の困難に見舞われ

 政府は、開幕の約2週間前、競技の大部分を無観客で開催すると決めた。開閉会式も、観客の拍手や声援がない中で行われる。

 政府や東京都、大会組織委員会は、感染対策に万全を尽くし、円滑な運営に努めることで、大会を成功に導く責任がある。

 東京大会の開催は2013年9月に決まった。しかし、新型コロナの感染拡大で、20年夏の開催予定が史上初めて延期された。それでも感染は収束せず、今も開催中止論がくすぶっている。

 招致の際は、東日本大震災から立ち直った姿を示す「復興五輪」を掲げたが、再生は道半ばだ。海外の観客受け入れを断念したため、被災地の現状を知ってもらうことも難しくなった。

 開催延期の後に打ち出した「コロナに打ち勝った証し」という目標の達成はおろか、今は感染拡大のまっただ中にある。

 日本選手団の壮行会で菅首相は「世界が大きな困難に直面する今だからこそ、団結して困難を乗り越えられることを世界に発信する大会にしたい」と呼びかけた。

 大会運営を巡る数々のトラブルにも見舞われながら、ようやくこの日を迎えた。大会を通じ、逆境の中でも諦めないことや、地道に鍛錬を積み重ねることの大切さを世界の人々に示したい。

 多くの会場を無観客にしたことで、会場内や周辺での感染リスクは減った。ただ、来日する選手や関係者は数万人規模に上っている。対策の徹底が不可欠だが、すでに欠陥が露呈している。

 ◆露呈した欠陥改めよ

 毎日の検査や厳しい行動制限が課され、外部とは接触しないことになっている。それでも、入国時に空港で一般客と交じったり、海外の報道関係者がホテルを抜け出して、観光地を訪れたりする姿が確認されているという。

 選手村に宿泊する選手や関係者がウイルス検査で陽性と判定されるケースも相次いでいる。政府や組織委は、五輪を機に国内外に感染を広げないことが、成功のカギを握っていると肝に銘じ、対策の見直しを進めねばならない。

 選手や関係者にも、自覚ある行動を促していく必要がある。

 当初、無観客とするのは、競技会場のある9都道県のうち首都圏の1都3県だけだった。だが、北海道や福島県はその後、無観客にすると方針を変更した。

 一方、宮城県は、当初の方針通り、上限1万人で観客を入れている。この判断には、感染拡大を懸念する仙台市長や地元医師会などから、無観客を求める声が相次いで寄せられていた。

 首都圏と地方都市では、感染状況が異なっている。リスクを適切に評価しないまま、無観客を選択するのではなく、まずは競技会場と自宅との直行直帰を観客に求めるなど、対策の徹底に力を注いでもらいたい。

 1964年の東京大会は、開催を機に東海道新幹線や首都高速の整備が進み、戦後復興の象徴となった。計16個の金メダルを獲得し、「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボール日本代表などの活躍が人々の心に残った。

 今回は、新競技となるスポーツクライミングやスケートボードなどのほか、野球とソフトボールも復活した。日本選手は、これらを含むすべての競技に出場する。

 ◆選手の活躍を記憶に

 日本オリンピック委員会の山下泰裕会長は、選手たちに「感謝と誇りを感じつつ、思う存分、輝いてほしい」と語りかけた。

 どの選手も、この1年、競技に集中しづらい環境だったに違いない。しかし、様々な制約の中で努力を続けてきた選手が躍動する姿は、前回と同様、人々の記憶に深く刻まれるはずだ。

 各地で計画していた交流行事は中止が相次いだ。思い描いていた五輪とすっかり様相が変わったことは、残念というほかない。

 それでも、スポーツには人の心を動かす「力」がある。苦難に直面した時、奮闘する選手の姿に勇気づけられた人は多いだろう。今大会でも、コロナ禍に苦しむ世界の人々に希望が届くといい。

無断転載・複製を禁じます
2228208 0 社説 2021/07/23 05:00:00 2021/07/23 05:00:00

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)