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中国の途上国への貸し付けが膨張している。過剰な債務となるのを食い止めるため、中国は融資の透明性を高めて、途上国の健全な発展につながる支援に努めるべきだ。
世界銀行は、低・中所得国の中国に対する債務が、2020年末で約1700億ドル(約19兆円)に上るとの報告書を公表した。
11年末と比べて3倍以上となっている。ほとんどがインフラ整備関連で、アジアや、サハラ砂漠より南のアフリカ各国への融資が目立つ。中国が最大の債権者となる国も増えているとみられる。
中国は巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げ、インフラ整備を通じて途上国への影響力の拡大を図っている。融資の急増は、その実態を浮き彫りにしたと言える。
だが、中国は融資に関する情報を十分に開示していない。米国の研究機関が「一帯一路」絡みの融資を分析した結果、国際機関などに報告されない「隠れた債務」が、2000~17年に3850億ドルに達したことがわかった。
契約の中身も問題視されている。開発融資では担保は必要ないが、中国は担保を求めるケースが多いという。他国の開発融資より金利が高く、返済期間は短い。
汚職がはびこって、通常なら貸し付けが受けられない国にも貸しているとされる。
途上国の支援は本来、健全で安定的な発展を手助けするものであるべきだ。汚職や人権侵害、環境破壊につながらないよう審査を行った上で、返済能力も考慮して貸し付けるのが望ましい。
中国の融資は、こうした途上国支援の精神に反していると言わざるを得ない。途上国を「借金漬け」にし、返済の代わりにインフラの使用権などの利益を得る「債務のわな」ではないかとの見方が各国から出ている。
スリランカは実際、中国の融資で最大級の港湾整備を行った後、返済に行き詰まり、中国が代償として港湾利用権を取得した。
ラオスは中国の政府系金融機関から多額の融資を受け、初の高速鉄道を建設しているが、事業規模が過大だと指摘されている。
中国は適正な貸し出しを行うとともに、融資に関する情報開示を進めて、国際社会の懸念を
日米豪印が先月、途上国のインフラ支援で合意するなど、一帯一路に対抗する構想の表明が相次いでいる。先進国側も途上国のニーズを丁寧に把握し、使いやすい枠組みを構築してもらいたい。