遺産の寄付 安心して託せる態勢が前提だ

 死後に財産を公益団体などに寄付する「遺贈寄付」が広がりつつある。寄付の希望者と受け入れ先を結び、手続きを支援する態勢を整えられるかどうかが定着のカギとなろう。

 遺贈寄付は、遺言書を作成しておき、特定の個人や団体に遺産を寄付する仕組みだ。多くの団体は少額の寄付も受け入れており、使途の指定もできるという。

 生前寄付のように老後の資金を残しておくことを計算する必要はない。年間50兆円ともいわれる相続資産のわずかでも寄付に回れば、資金不足に悩む慈善団体や困窮する人を救えることになる。

 日本財団は2016年に専門の窓口を設置し、昨年は2000件近い問い合わせが寄せられた。

 「日本より厳しい状況にある海外の人々の役に立ててほしい」という遺志を受けて、寄付金をカンボジアの体育館建設に充てた例もある。遺贈者の思いを現地に伝え続けるために、体育館にはその人の名前が刻まれたという。

 遺贈寄付への関心が高まった背景には、人生の終わりを想定して準備をする「終活」の広がりや、未婚者、子供のいない夫婦の増加などが指摘されている。

 70歳以上の高齢者に対する意識調査では、コロナ禍を機に遺贈寄付に関心を持ったという人が多く、検討動機では「財産の行方を自分で選択したい」が最多だった。次世代への貢献を考える人が増えているのではないか。

 ただ、善意を実際に生かすには寄付をする側が生前に適切な手続きを取っておく必要がある。

 まず、正式な遺言書を残すことが前提となる。配偶者や子供には民法で相続を受ける権利が認められている。遺贈寄付について事前に了解を得ておくことが望ましいと言えよう。

 不動産や山林などの資産は処理が難しいため、事前に相談するよう求めている団体もある。

 手続きのハードルが高いと感じたり、不安を覚えたりする人は少なくないだろう。専門家によるアドバイスを手軽に受けられる態勢づくりが不可欠である。

 遺贈寄付の普及をはかる「全国レガシーギフト協会」は、専門家との相談の受け付けや寄付先の団体の紹介に力を入れている。

 一部の団体は、遺贈寄付を受けた経験が乏しく、一連の手続きを自分たちだけでできないところもあるという。団体側が研修などを通じて専門知識を持ち、遺贈寄付を有効に使った実績を重ねて信頼を得ていくことが大事だ。

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