リニア建設工事 難所に向け安全対策の強化を

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 リニア中央新幹線の工事で作業員2人が死傷する崩落事故が起きた。今後、前例のない難工事が待ち受ける。JR東海は原因を究明し、再発防止に努める必要がある。

 事故は、岐阜県中津川市の作業用トンネルの工事現場で発生した。発破作業に伴って岩盤の一部が崩落し、作業員1人が死亡、1人が重傷を負った。リニア工事での死亡事故は初めてのことだ。

 JR東海は、山岳部のトンネル工事を一時中断し、各現場に安全対策の徹底を図った。県警が業務上過失致死傷の疑いも視野に、事故当時の状況などを調べている。作業手順や安全管理に不備はなかったのか、解明してほしい。

 リニアは、先行開業を予定している品川―名古屋間286キロの86%がトンネル区間となる。2015年に着工し、現在は複数の工区で工事が進められている。

 「大深度地下」と呼ばれる地下40メートルよりさらに深い地点の試掘も始まった。品川からの33キロと愛知県の17キロが大深度工事となる。

 東京、大阪、名古屋圏の大深度地下は、国土交通相や知事が認可すれば、地上の土地所有者の同意を得ずに工事できる。これまでは地盤は深くなるほど固くなり、大深度地下の工事が地表に与える影響は小さいとされてきた。

 しかし、昨年、東京外郭環状道路の大深度工事で、東京都調布市の市道が陥没する事故が起きた。リニアの工事でも、地盤沈下などの不安を抱える住民は多い。

 JR東海は、地表の建物などへの影響を詳しく調べ、安全性を確認することが重要である。

 都市部以外でも、南アルプスの地下1400メートル地点の掘削など、難度の高い工事が続く。ひとたび事故が起きれば、工期の遅れにもつながる。安全対策を今一度点検しなければならない。

 リニアは、総工費が9兆円に上る巨大な国家プロジェクトだ。東京、名古屋、大阪の3大都市圏が1時間強でつながれ、人や物の流れが加速することで、大きな経済効果も期待されている。

 ただ、静岡県は大井川の水量への影響などを理由に県内のトンネル工事の本格着工を認めていない。当初目指していた27年の開業は、延期が避けられない。

 現在、有識者会議が大井川への影響を検証している。JR東海はこうした議論を踏まえ、住民に丁寧に説明する姿勢が大切だ。プロジェクトの成功には、安全の確保と住民の理解が不可欠であることを忘れてはならない。

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2501876 0 社説 2021/11/08 05:00:00 2021/11/08 05:00:00

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