比大統領選 対中融和と強権改める機会だ

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 米中対立が深まる中でフィリピンはどのような立ち位置をとるのか。傷んだ民主主義体制の修復と合わせて選挙戦の大きな争点になるだろう。

 来年5月のフィリピン大統領選の立候補届け出が締め切られ、対決の構図が固まった。ドゥテルテ大統領の対中融和政策や強権的な統治手法への賛否を巡り、有力候補の立場は分かれている。

 1960~80年代に長期独裁体制を敷いた故マルコス元大統領の長男、マルコス元上院議員は、ドゥテルテ氏の路線に近い。

 これに対し、現政権のロブレド副大統領や、元ボクシング世界王者のパッキャオ上院議員は政策の大幅な転換を唱えている。

 フィリピンは南シナ海で中国と領有権を争っている。アキノ前政権の提訴を受け、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年、中国の一方的な主権主張を全面的に否定する判決を出した。

 だが、ドゥテルテ氏は判決を棚上げする発言を繰り返してきた。係争海域では、中国船がフィリピン船の進路を妨害する挑発行為が相次いでいる。

 中国の違法行為を黙認してきたのは、経済関係を優先しているからだろう。中国の直接投資額は前政権時代の10倍以上に達し、圧倒的な存在感を示している。

 加えて、米国との伝統的な同盟関係が弱まったことには懸念を抱かざるを得ない。ドゥテルテ氏は米国からの人権問題での批判に反発し、米比地位協定の破棄を通知したこともあった。

 米国が今年に入り、英豪との新たな安全保障協力の枠組み「オーカス」を創設したのは、地域の安定を維持するパートナーとして、フィリピンよりも豪州を重視している姿勢の表れだろう。

 日米が推進する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、フィリピンはどんな役割を果たせるのか。大統領選の各候補は突っ込んだ議論を行うべきだ。

 内政では、抵抗する容疑者の殺害も辞さないドゥテルテ氏の、超法規的な麻薬対策の評価が焦点になる。摘発に伴う死者は数千人に及んでいる。国際刑事裁判所(ICC)は、「人道に対する罪」の疑いで捜査開始を決定した。

 政権に批判的なメディアへの圧力も強まっている。

 民衆蜂起の「ピープル・パワー革命」でマルコス独裁政権を倒した当時、フィリピンはアジアの民主化を先導する存在だった。大統領選を、民主主義と人権を取り戻す契機としなければならない。

スクラップは会員限定です

使い方
「社説」の最新記事一覧
2553485 0 社説 2021/11/28 05:00:00 2021/11/28 05:00:00

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)