原発が標的に プーチン氏は正気を取り戻せ

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 原子力施設への攻撃は取り返しのつかない大惨事を招きかねない。人類と文明社会に対する許しがたい暴挙である。

 ロシアがウクライナへの侵略を続ける中、南東部のザポリージャ原子力発電所で火災が起きた。消火には成功し、現段階で放射線レベルに変化はないが、原発は露軍に制圧されたという。

 稼働中の原発が軍事攻撃を受けた例はこれまでない。武力紛争の被害軽減を目的とするジュネーブ条約は、原発を攻撃対象にすることを禁じている。こうした事態を招いたロシア軍の軍事行動は国際法違反である。

 ザポリージャ原発は欧州最大規模の原発だ。露軍部隊の接近を受け、住民は原発の安全を守るためにバリケードを築いて抵抗していた。ウクライナ側によると、露軍は原発に向かって砲撃し、交戦になったという。

 国際原子力機関(IAEA)は3日の緊急理事会で、ロシアの行動は原子力施設の安全に対する「深刻で直接的な脅威」だとし、原発の安全な稼働のためにロシアに軍事作戦の停止を求める決議を採択したばかりだった。

 原発の敷地には、冷却水の取水口や、それを循環させるパイプ、ポンプなど、重要設備が数多く存在する。それらが破壊されたり、管理が滞ったりしただけでも、燃料の安定した冷却を確保できず、重大事故を招く恐れがある。

 プーチン露大統領は、核兵器の使用も含めて、目的達成のためには手段を選ばない姿勢を示してきた。露軍は1986年に大事故を起こしたチェルノブイリ原発も、すでに制圧している。

 核の惨禍は、ウクライナ一国にとどまらず、欧州や世界全体に及びかねない。こうした危険を承知の上で、原発の制圧や核の威嚇を続けるプーチン氏の言動は、正気の沙汰とは思えない。

 ウクライナは全発電量の半分以上を原発に頼っている。電力供給の遮断や原発事故の危険をちらつかせ、ウクライナに脅しをかけて全面降伏に追い込もうとする戦術は、人道に対する犯罪である。

 原発の安全維持には、戦闘停止とロシアによる制圧の解除が不可欠だ。ウクライナやIAEA、各国の専門家が管理し、原発が戦闘の影響を受けていないかどうかを点検、監視する必要がある。

 ロシア以外でIAEAの決議に反対したのは中国だけだった。世界がウクライナとの連帯を強める中でロシアの違法行為に加担するのは恥知らずというほかない。

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2810387 0 社説 2022/03/05 05:00:00 2022/03/05 05:00:00

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