米鉄鋼関税 完全な撤廃を粘り強く求めよ

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 根拠の乏しい高関税を放置したままでは、自由貿易体制を不安定にしかねない。日本は、粘り強く完全撤廃を米国に働きかけていくべきだ。

 米政府は、日本から輸入する鉄鋼に課していた25%の追加関税の一部を今月から撤廃した。年125万トンまでは関税が免除されるという。アルミニウムに対する10%の追加関税は維持された。

 追加関税は、保護主義的な政策を掲げた米トランプ前政権が2018年に導入したものだ。

 中国の過剰生産による市況の悪化で鉄鋼業界が打撃を受けたことから、「安全保障上の脅威」を理由に実施し、日本や欧州連合(EU)なども対象とした。

 同盟国との関係を重視するバイデン政権に交代した後、米国が関係国と見直し交渉を行っていた。まずEUと合意し、日本、英国とも部分的な撤廃で折り合った。

 不当な関税の排除に向けて一歩前進したとはいえ、完全な撤廃には至っておらず、とても容認できる内容とは言えない。

 年125万トンの上限は、18~19年の輸入量の平均を目安に設定したというが、追加関税の発動前である17年の173万トンを大幅に下回っている。そもそも上限など設けず、アルミニウムも含め全て撤廃するのが筋である。

 追加関税の発動後、米鉄鋼業界の業績は回復していたという。バイデン政権は11月の中間選挙を控え、支持基盤となる鉄鋼業界に配慮して、完全撤廃に踏み切れなかったのだろう。

 だが、同盟国である日本からの鉄鋼輸出が、米国の安全保障を脅かすという理屈はおかしい。

 一方的な関税措置を禁じた世界貿易機関(WTO)のルールは、安全保障を理由にした例外を認めているが、それを乱発すれば自由貿易体制が揺らぐ恐れがある。

 関税の完全撤廃に向けて、日本政府は、EUや英国とも連携を深める必要がある。世界一の経済大国である米国は、自らの責任の重さを自覚してもらいたい。

 世界的なインフレにロシアのウクライナ侵略の影響が加わって、資源や原材料が値上がりしている。鋼材価格も上昇基調だ。関税を撤廃すれば、米国内の物価押し下げにも貢献するだろう。

 ウクライナ危機は、資源の調達など経済面でも民主主義陣営が結束を強めることの大切さを浮き彫りにした。幅広い物資の確保で協調体制が不可欠だ。リーダーたるべき米国の身勝手な措置で、その機運に水を差してはならない。

スクラップは会員限定です

使い方
「社説」の最新記事一覧
2889653 0 社説 2022/04/03 05:00:00 2022/04/03 05:00:00

ピックアップ

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)