出世払い奨学金 効果的な支援につながるか

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 岸田首相を議長とする「教育未来創造会議」が新たな奨学金の創設に向けた検討を始めた。意欲と能力のある学生を支える制度にできるのか、十分な議論が必要だ。

 新しい制度は「出世払い」方式と呼ばれ、国が大学などの授業料を肩代わりし、学生が卒業後、一定の年収を超えたら、所得に応じた額を返済する仕組みだ。首相は5月中に検討結果をまとめるよう末松文部科学相に指示した。

 国の奨学金は現在、住民税非課税か年収の目安が約380万円未満の世帯が対象の給付型と、約1100万円以下の世帯が対象の貸与型に大別される。民間の奨学金も含めると、利用する大学生は全体の半数に上っている。

 給付型は返済不要だが、貸与型は卒業時に借金を抱える形になり、返済に苦しむ学生も多い。これに対し、出世払い方式は親の収入に関係なく、どの学生も利用できる仕組みが検討されている。

 近年は学費が上昇しているうえ、コロナ禍でアルバイトが出来ず、困窮する学生も少なくない。経済的な不安を感じずに学べる環境を整えることは重要だ。教育費の負担が軽減されれば、少子化の改善につながる可能性もある。

 この時期に新たな奨学金の導入を検討する背景には、夏の参院選を前に、若い世代にアピールする狙いもあるのだろう。ただ、実現には課題が多い。

 出世払い方式は豪州が採用しており、過去にも自民党内で検討されたことがある。しかし、巨額の財源を確保するのが難しいため、実現には至っていない。

 返済の開始時期は、「年収300万円以上」に達した段階とする案が検討されている。所得が低ければ返済が猶予されるため、就労意欲をそぐと指摘されている。

 今も苦労しながら返済を続けている卒業生との不公平感をどうするのかという難題もある。

 導入の可否を見極めるにあたり、まずは課題を十分に整理することが不可欠だ。

 現行の給付型奨学金は制度開始以降、利用者数が国の想定を下回っている。周知が不十分で、受給対象なのに申請しないままになっている学生がいる可能性もあり、検証する必要がある。

 給付型奨学金を受けた学生へのアンケートでは、奨学金がなければ進学をあきらめたという回答が3割に上った。奨学金が果たす役割は大きい。将来への不安から進学を断念する若者が出ないよう制度を工夫してほしい。

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2900986 0 社説 2022/04/07 05:00:00 2022/04/07 05:00:00

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