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世界経済を取り巻く課題が山積する中で、主要国の政策協調の場が機能不全に陥っている。その責任がすべてロシアにあることは明白だ。
主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、米ワシントンで開かれた。ロシアによるウクライナ侵略後、G20の閣僚級会合の開催は初めてだ。
日米欧とロシアなどの対立で共同声明は出せなかった。オンライン参加したシルアノフ財務相らロシア代表団の発言時には米英やカナダの出席者らが退席し、抗議の意を示す異例の展開となった。
資源や食料の価格高騰によるインフレへの対処、コロナ禍で膨らんだ途上国の債務問題や温暖化対策の促進など、各国が連携して取り組むべき課題は多い。それにもかかわらず、G20が具体策を示せなかったのは深刻な事態だ。
開幕前から、ロシアを強く非難する日米欧など先進7か国(G7)は、G20からのロシア排除を主張した。中国やブラジルはこれに反対し、亀裂が表面化していた。
新型コロナウイルスの感染拡大による低迷から回復途上にある世界経済に、大きな打撃を与えたのはロシアの暴挙である。
国際通貨基金(IMF)は2022年の世界の経済成長率見通しを前年比3・6%増とし、1月時点の予想から0・8ポイント下げた。ウクライナ危機が、世界的なインフレに拍車をかけているためだ。
インフレは低所得者の家計を直撃し、スリランカなど途上国には政情不安が広がっている。
G20の議長国を務めるインドネシアのムルヤニ財務相は、会議が閉幕した後の記者会見で、参加メンバーはウクライナ危機が世界経済の回復を妨げているとの認識を共有したと説明した。
人道的危機への深い懸念や、戦争の早期終結を求める意見も出たという。ロシアは、そうした声を重く受け止めねばならない。
G20は、1997年のアジア通貨危機をきっかけに創設された。2008年のリーマン・ショック後は、中国を始めとする新興国の台頭に伴い、新興国も入るG20が国際経済について議論する最も重要な会合と位置づけられた。
今秋の首脳会議に向け、今後も閣僚級会合が予定されている。
G7は結束し、G20の場を活用してロシアに圧力をかけ続けるべきだ。中国やインドには、制裁の抜け穴とならないよう強く促すとともに、南米や中東などの他の参加メンバーにも制裁への協力を訴えていく必要がある。