量子技術戦略 実用化に向けて巻き返し図れ

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 スーパーコンピューターをはるかに上回る性能を持つ量子コンピューターなどの量子技術が世界的に注目されている。日本は開発競争で、これ以上後れをとってはならない。

 政府が量子技術に関する新たな国家戦略をまとめた。東北大や沖縄科学技術大学院大学など4か所に拠点を設け、今年度中に国産の量子コンピューター初号機を整備することを目標に掲げた。

 将来的には金融や医療、運輸などの幅広い分野で活用し、2030年の利用者を1000万人に増やすとしている。まずは研究に携わる人材を確保し、自前の技術を蓄積していくことが重要だ。

 原子や電子などミクロの世界を扱う「量子力学」の原理をうまく使うと、従来のスパコンでは何年もかかるような計算が、数分で完了できるようになる。

 量子技術を暗号として利用すれば、盗み見が原理的に不可能になり、強固な通信システムが実現する。新戦略が「国家間の覇権争いの中核となる重要技術」と指摘したのは大げさではないだろう。

 この分野で日本は出遅れている感が否めないが、研究力が劣っていたわけではない。東京工業大の研究者は1998年、量子コンピューターの基礎理論を築いたが、この理論を使って商品化したのはカナダの新興企業だった。

 NECの研究所は99年、世界で初めて量子コンピューターの基本回路を開発することに成功した。しかし、近年は、グーグルやIBMといった米国企業の野心的な取り組みが目立っている。

 日本は、貴重な技術があっても、他国がそれを発展させて価値が認められるまで、大胆な支援や民間の投資につなげるのが難しい。海外の潮流に追随するだけでは、世界に先んじることはできまい。

 急速に技術開発を進める米国や中国に追いつくには、官民を挙げた体制づくりが急務だ。

 量子コンピューターは、発展途上段階の技術で、今後、どのような方式が主流になっていくのか見通せない。まだ巻き返すチャンスはあるのではないか。

 米国は、巨大企業が豊富な資金力を生かして迅速な研究開発を進めている。中国は、国家的な戦略を掲げ、人工衛星を使った量子通信などに力を注いでいる。

 量子技術は、基礎研究が実用化につながるまでの時間が比較的短いとされる。応用範囲も広い。国の研究機関や大学、企業の連携を強化し、世界と競える力を育てていかなければならない。

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2941726 0 社説 2022/04/22 05:00:00 2022/04/22 05:00:00

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