業績開示見直し 投資家に必要な情報の精査を

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 企業の適切な情報開示は、株式市場の運営の基礎となるものだ。その見直しが開示姿勢の後退と受け止められぬよう、重要情報を迅速に提供する仕組みを維持したい。

 金融庁は、金融商品取引法で上場企業に開示を義務づけている「四半期報告書」を廃止し、証券取引所が規則に基づいて上場企業に求めている四半期ごとの「決算短信」に一本化する方針だ。

 来年の通常国会に改正法案を提出し、2023年度以降に実施する見通しだという。

 四半期報告書と決算短信は、書式が異なるものの、内容の多くが重複している。企業からは、資料を別々に3か月ごとに作る負担の重さを訴える声が出ていた。一本化することで、事務負担の軽減を図る狙いは理解できる。

 ただ、決算短信は四半期報告書より簡素な中身となっている。一本化で公表する情報が減れば、海外投資家などから開示に消極的になったとみられる恐れがある。

 見直しの後も、四半期報告書に含まれる重要な情報は、決算短信に引き続き記載するべきだ。金融庁は、投資家などに幅広く意見を聞きながら、決算短信に必要な情報を精査してもらいたい。

 投資家保護の観点からは、情報の信頼性の確保も不可欠だ。

 四半期報告書は、06年のライブドア事件を教訓に金商法で開示を義務化し、虚偽記載に罰則を設けた経緯がある。決算短信はあくまで証券取引所のルールによるもので、法律に基づく罰則はない。

 一本化が、不正を助長する誘因となってはならない。

 金融庁は、決算短信を金商法の臨時報告書と位置づけ、虚偽記載には罰則規定を適用する案を有識者会議に提示した。不正の抑止に実効性のある制度とするため、論議を尽くしてもらいたい。

 四半期開示を見直すことは、岸田首相が就任時に看板政策として掲げた。短期的な利益ばかりを追求するのではなく、中長期の視点に立った投資をするよう促し、賃上げなどによる「成長と分配の好循環」を実現するのが目的だ。

 当初は、四半期開示の廃止も検討されたが、金融庁の有識者会議では、企業が短期の利益を重視する原因になっているとは言えないとの意見が大勢を占め、廃止は見送られた。妥当な判断である。

 中長期的には、開示内容の質を高めることが大切だ。脱炭素や人への投資などに関する情報の充実が望まれる。それが企業の持続的な成長につながるのでないか。

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2946951 0 社説 2022/04/24 05:00:00 2022/04/24 05:00:00

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