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新型コロナウイルスの流行による自粛生活が長期化し、高齢者の体力低下が心配されている。積極的に体を動かし、健康の維持に努めたい。
今冬の感染「第6波」のピーク時は、1日あたりの感染者数が10万人を超え、全都道府県で過去最多を更新した。感染を避けるため、外出を控えた高齢者は多かっただろう。
自粛生活が続くと、活動量が減り、それまで元気だった高齢者が要介護手前の虚弱状態である「コロナフレイル」に陥る危険がある。心身の機能が一気に低下するケースもあり、注意が必要だ。
日本老年医学会は、体重が減ったり、疲れやすくなったりした人はコロナフレイルの可能性があると指摘している。予防には運動、食事、社会参加の三つが重要とされ、個人でできることは多い。
まずは、座っている時間を減らすことが大切だ。家の中で家事や体操を毎日続けるだけでも筋力はある程度、維持できる。散歩や買い物に行くなど、意識して体を動かすことに取り組んでほしい。
食事も時間を決めて、主食、主菜、副菜と、バランス良く3食とるようにしたい。特に肉や魚など、筋肉を作るたんぱく質の摂取を心がけることが大事だ。
高齢者が社会とのつながりを失うと気持ちが沈み、心身の衰えが進みやすい。食べ物をかむ機能を維持するには、友人とのおしゃべりなども有効だ。独り暮らしの高齢者には、家族や地域の友人が積極的に声をかけてもらいたい。
タブレット端末を貸し出し、オンラインで体操の指導をしたり、交流会を開いたりしている自治体もある。本来なら直接対面して交流をすることが望ましいが、感染が落ち着いていない地域では、オンラインの活用も一案だろう。
厚生労働省によると、今年1月以降、コロナに感染した70歳以上の人は約40万人に上っている。わずか4か月間で、それまでの累計を大きく上回ったことになる。
入院で寝たきりの生活を送ると、筋力が急速に低下する。コロナから回復できても、日常生活に戻れない高齢者は多い。自治体はこうした状況を防ぐため、長期的な支援に努めることが重要だ。
万一、入院した場合は、発症の早期から理学療法士らがリハビリを実施することで、退院時の体力低下を防げることが多いという結果が出ている。
政府は、全国どこの病院でも質の高いリハビリが受けられる体制を整えることが急務だ。