憲法施行75年 激動期に対応する改正論議を

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 ◆自衛隊明記を先延ばしするな◆

 日本国憲法はきょう、施行から75年を迎えた。激動する時代にふさわしい最高法規のあり方について、一人ひとりが考える機会としたい。

 ロシアによるウクライナ侵略は、大国の一方的な暴挙により、隣国の主権が侵害されるという厳しい現実を突き付けた。国連は十分に機能を果たせず、戦後の世界秩序が揺らいでいる。

 日本も、他国から主権を脅かされるリスクと無縁ではない。国の安全を守るため、憲法に立ち返って議論を深める必要がある。

 前文の理想さらに遠く

 憲法は終戦直後、連合国軍の占領下で制定された。前文では、日本国民は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とうたった。

 だが、戦争放棄の前提となった前文の理想は実現せず、「諸国民」を信頼するだけでは平和を維持できないことは明白となった。

 日本周辺では、軍事大国化した中国が尖閣諸島の領海への侵入を常態化させ、北朝鮮はミサイル発射を繰り返している。

 その現実を直視し、国民を守り、国際社会の平和に貢献する方策を考えるべき時にある。

 憲法改正の最大の焦点は、国の安全保障を担う自衛隊をどう位置づけるかだ。自衛隊は、国の防衛に加え、国際貢献や災害時の救援、医療支援などに取り組んでいる。国民も厚い信頼を寄せている。

 それにもかかわらず、9条が戦力不保持を定めていることから、憲法学者の一部は自衛隊に違憲の疑いを向けてきた。自衛隊に対する違憲論を 払拭ふっしょく する必要性はさらに高まっている。

 読売新聞社の世論調査では、憲法を改正する方がよいと答えた人は60%に上昇し、反対派の38%との差が開いた。改正すべき項目では、「自衛のための軍隊保持」が45%と最多だった。

 厳しい安全保障環境を背景に、自衛隊の役割を明確にすべきだという意識が国民にも定着しつつあるのだろう。与野党は、こうした世論の動向も踏まえ、早期に方向性を示すことが重要だ。

 自民党は2018年、9条を維持したまま、自衛隊の根拠規定を追加することを提案した。

 自衛隊が9条2項が保持を禁じる「戦力」にあたらないかという議論は残るが、具体的な条文案として示したのは前進だ。各党はこれをたたき台にしてはどうか。

 自衛隊をめぐり、共産党の志位委員長が「急迫不正の侵略がされた場合、自衛隊を含めあらゆる手段を用いて、国民の命と日本の主権を守る」と述べたという。

 緊急事態条項も重要だ

 自衛隊の解消を掲げる党綱領とは矛盾しているが、自衛隊の意義を認めたということだろう。他の野党も、現実の脅威から目を背けず、憲法を論じてほしい。

 緊急事態への対応についても、検討を急がねばならない。自民党は衆院憲法審査会で、ウクライナ憲法を例に挙げ、日本にも緊急事態条項が必要だと指摘した。

 ウクライナ憲法には、大統領が戒厳や非常事態を布告すると、収束まで国会議員の任期を延長するという規定がある。実際、ロシアの侵略開始後も、ウクライナ議会は法律を成立させるなどの機能を果たしているという。

 日本の憲法には、緊急事態に関する規定はほとんどなく、非常時に選挙ができない場合、国会議員の任期が切れて不在となる可能性がある。大規模災害や感染症流行などの緊急時を想定した規定が乏しいことは心もとない。

 日本維新の会、国民民主党なども、緊急時の議員任期延長には前向きな立場だ。各国の事例を参考に、具体的な条文案について検討を進めることが大切である。

 参院選で問われる各党

 今国会で、衆参両院の憲法審査会は活発な討議を続けている。

 昨年の衆院選で、維新など憲法改正に前向きな野党が勢力を伸ばした影響だろう。7月の参院選でも、憲法改正への各党の姿勢が見定められるのは間違いない。各党は党内の意見を集約し、明快な見解を示すべきだ。

 衆院の審査会は、緊急時に限り、国会でのオンライン審議は憲法上可能だとする報告書をまとめた。実現には技術的な課題が残るが、与野党が話し合い、一定の憲法解釈を示したのは評価できる。

 さらに、衆参両院の役割分担の見直しや1票の格差、デジタル社会への対応など、数多くの論点がある。改正項目の絞り込みに向けて、引き続き建設的に議論を積み重ねてもらいたい。

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2970185 0 社説 2022/05/03 05:00:00 2022/05/03 05:00:00

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