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マンションや住宅のベランダや窓から、幼い子供が転落する事故が後を絶たない。子供は思わぬ行動をとることが多く、危険箇所の安全確認を怠らないようにしたい。
東京消防庁の管内では2017~21年、2階以上から落ちて救急搬送された5歳以下の子供が62人に上った。このうち13人は搬送時、生命の危険がある状態だった。大阪市内でも、毎年のように同様の転落事故が起きている。
子供の転落事故は、気候が暖かくなる5月が多い。外気を入れようと窓を開ける際は注意が要る。2歳児が網戸に寄りかかり、網戸ごと落下したケースもある。
幼児は歩き回れるようになると、好奇心から大人が想定しない行動をとりがちだ。家の中だからといって安心はできない。
建築基準法は、2階以上にあるベランダの手すりの高さを1・1メートル以上と定めている。ただ、4歳児の平均身長は約1メートルで、よじ登れるとの実験結果もある。
滋賀県では3月、2歳の男児がマンション4階のベランダの手すりを越え、落下したとみられる死亡事故が起きた。当時、ベランダに出る窓は施錠されていたが、この男児は最近、窓の鍵を開けられるようになっていたという。
母親は別の部屋にいた。警察の調べに対し、「うとうとして目を離した」と説明したとされる。
過去の事故では、ベランダに置かれたベビーカーやスーツケースに子供が足をかけて、手すりを乗り越える例があった。エアコンの室外機や植木鉢などが踏み台として使われる恐れもある。
新型コロナウイルスの流行で、家で過ごす時間が増えた。ベランダで子供を遊ばせる親は多い。テーブルやいすを置いてくつろぐ「ベランピング」も人気だ。
在宅勤務中だったり、幼い子供が複数いたりして、絶えず子供の動向に目配りするのが難しい家庭もあるだろう。普段から事故の危険性がないかチェックし、リスクを取り除くことが重要だ。
手すりを越えられそうな場所に荷物を置かないようにしたい。室外機を手すりから遠ざける対策も有効だ。柵の隙間を子供が通れないか、改めて確認してほしい。
都市部を中心に高層マンションが増えており、ひとたび事故が起きれば取り返しがつかない。
国土交通省は今年、子供が簡単に登れない手すりなどを設置する費用を補助する事業を始めた。こうした制度も活用して、子供の転落事故を防いでもらいたい。