脱炭素戦略 巨額の投資をどう引き出すか

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 脱炭素社会の実現に向けた設備投資や研究開発には、巨額の資金が必要だ。企業の投資意欲を引き出し、日本経済の成長につなげる戦略を練り上げていくことが大切になる。

 政府は「クリーンエネルギー戦略」の中間整理を公表した。2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする方策を示すもので、岸田首相が策定を指示していた。年内に戦略をまとめる方針だ。

 中間整理では、脱炭素を進めるための官民の投資額の試算を示した。30年代半ばまでの10年間で総額150兆円かかるという。30年時点では、少なくとも現状の3倍程度の年17兆円が必要になる。

 投資の対象は多岐にわたる。期待される分野では、太陽光発電など再生可能エネルギー設備に2兆円、燃焼時に温室効果ガスを出さない水素・アンモニアの供給網に3000億円、蓄電池工場の建設に6000億円を見込んだ。

 ただ、中間整理は、試算額と課題を並べるにとどまっている。企業に投資を促すための具体策を明示してもらいたい。

 例えば、水素は火力発電に使えるが、製造コストは天然ガスなど既存の燃料より大幅に割高だ。採算性に課題が残り、投資に二の足を踏むケースも多いという。

 中間整理は、初期投資を重点的に後押しする制度を検討するとしている。企業が投資を決断しやすい有効な枠組みが不可欠だ。

 脱炭素を巡り、米国や欧州連合(EU)、中国など世界で巨額の財政支出を表明する動きが相次いでいる。技術開発や関連ビジネスで後れを取らないためにも、日本政府の積極支援が望まれる。

 中間整理は、原子力発電の「最大限の活用」を明記した。ただ、再稼働をどの程度のペースで進めるのかは不明確だ。

 東日本大震災後、稼働申請があった原発27基のうち、再稼働したのは10基しかない。政府は、エネルギー基本計画で30年度の総発電量に占める原発の割合を20~22%としているが、27基全てが稼働しなければ達成は難しい。

 二酸化炭素を排出しない原発の再稼働は、既存の施設を活用できる現実的な選択肢となろう。政府が責任を持って、安全性を確保した上で再稼働を推進する明確な道筋を示してほしい。

 ウクライナ危機による燃料価格の高騰を受け、欧州などで原発の新設を打ち出す動きが広がっている。エネルギー安全保障の面でも原発は重要だ。日本政府も新増設の論議を避けるべきではない。

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3008307 0 社説 2022/05/18 05:00:00 2022/05/18 05:00:00

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