完了しました
高齢者の運転による交通事故を防ぎ、安全に移動できる社会づくりを進める契機としたい。
一定の交通違反歴がある75歳以上の人に対する免許更新時の「運転技能検査」が5月中旬から始まった。
対象となるのは、運転免許更新時の誕生日の160日前から過去3年以内に信号無視や速度超過、逆走などの違反があった人だ。
実際に車を運転してもらい、一時停止の正確性などを指導員が採点する。更新期限の6か月前から何度でも受けられるが、不合格だと免許は失効する。運転技能の衰えを見極め、事故抑止につなげる狙いは理解できる。
現在、75歳以上の人は認知機能検査と高齢者講習を受け、問題がなければ免許を更新できる仕組みが導入されている。
違反歴のある人にとっては更新のハードルが上がることになるが、自らの運転技術を確認する機会としてもらいたい。
検査の公平性の確保が必要だ。指導員により採点が異なることがあってはならない。申し込み後の待ち日数の短縮も課題だろう。
ペダルの踏み間違いによる急加速を抑制する装置や自動ブレーキを搭載した「安全運転サポート車(サポカー)」に限って運転できる免許制度も今回新設された。
昨年、死亡事故を起こした75歳以上の人は346人で、ハンドルの操作ミスやブレーキとアクセルの踏み間違いが目立つという。
サポカー限定免許の普及で、こうした事故を減らす効果が期待できる。運転に不安を感じる人が、免許を自主返納する前の選択肢にもなるのではないか。
ただし、技能検査の合格や、サポカーの運転を過信することは禁物だ。本人が安全運転を徹底するだけでなく、家族や周囲の人の見守りが事故防止につながる。
免許を返納した人は昨年50万人を超えた。運転技能検査で不合格になった人が今後、上乗せされることになる。
地方では生活の足として車を必要とする人が多い。免許を手放した後の移動手段を確保しなければ行動範囲が狭まり、心身の急激な衰えを招きかねない。
各地の自治体がバスやタクシーの利用券を提供しているが、台数が少なかったり、バス停が遠かったりして、十分に活用されていないと指摘されている。
ボランティアによる送迎や住民の車への相乗りを進めている地域もある。それぞれの実情に応じた支え方を考えることが重要だ。