核禁条約会議 理想と現実の溝をどう埋める

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 ウクライナを侵略したロシアは、核兵器使用の脅しをかけて、力による領土拡大を図っている。この厳しい現実と核廃絶の理想の溝を埋める手立てを考えねばならない。

 核兵器の開発、保有、使用、威嚇などを包括的に禁じる核兵器禁止条約の初の締約国会議がウィーンで開かれた。条約は昨年発効し、60か国以上が批准している。

 米英仏中露の核保有国は参加せず、規定には縛られない。条約は核の抑止力としての役割も否定しているため、米国の「核の傘」の下で安全保障を図る日本や欧州の同盟国も参加していない。

 核兵器が現実の世界において大国間戦争を防ぐ機能を果たしていることに目を向ける必要がある。ウクライナ危機で、米露が直接の軍事衝突を避けているのも、両国が破滅的な核戦争につながる危険を認識しているためだろう。

 スウェーデンとフィンランドは軍事的中立を転換し、北大西洋条約機構(NATO)への加盟を進めている。ロシアの脅威から自国を守るには、NATOの「核の傘」が有効だとする判断からだ。

 締約国会議では条約参加を呼びかける文書が採択されたが、こうした現実を無視していては、かけ声倒れに終わるのではないか。

 NATO加盟国のドイツは会議にオブザーバー参加する一方、日本は見送った。

 ドイツは自国内にある米国の核兵器を有事に使用できる「核共有」制度を持っている。核抑止体制に直接関与しているため、核禁条約支持と誤解される余地はない。

 日本は核を持たず、米国の核戦力に依存している。核禁条約に前向きの印象を与えれば、日米の核抑止体制の信頼性を損ないかねない。参加見送りは妥当だ。

 中露は核兵器の増産や改良を進め、米英仏は対抗して核抑止力の強化に動いている。スウェーデンの研究機関は今月発表した報告書で、世界の核弾頭数は今後10年間で増加に転じると予測した。

 核保有国と非保有国が協力し、核軍拡に歯止めをかけるための枠組みは、世界191か国・地域が締約している核拡散防止条約(NPT)しかない。NPTは米英仏中露に核兵器保有を認める一方、核軍縮交渉も義務づけている。

 岸田首相は8月のNPT再検討会議に日本の首相として初めて出席する方針だ。核の非人道性と、核が安全保障に果たす役割の双方を深く知る立場から、核軍縮推進に向けて各国をつなぐメッセージを発してほしい。

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3112660 0 社説 2022/06/25 05:00:00 2022/06/25 05:00:00

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