空き家増え 集落衰え…全国自治体首長アンケート

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人口減 影響顕在化

「お変わりありませんか」。愛媛県新居浜市の別子山地区では、山岡伸三医師(63)が週1回、高齢者らを診察しに訪れる。過疎地域では医療・福祉の充実が大きな課題だ=鍜冶明日翔撮影
「お変わりありませんか」。愛媛県新居浜市の別子山地区では、山岡伸三医師(63)が週1回、高齢者らを診察しに訪れる。過疎地域では医療・福祉の充実が大きな課題だ=鍜冶明日翔撮影
所有者が死亡し、倒壊の危険性がある空き家(茨城県で)
所有者が死亡し、倒壊の危険性がある空き家(茨城県で)

 4月の統一地方選を前に読売新聞社が行った「全国自治体首長アンケート」では、地方を中心に人口減少が一段と進み、多くの首長が空き家の増加や集落・コミュニティーの消滅、農林水産業や地場産業の衰退などに危機感を持っていることがわかった。子育て支援や医療・福祉の充実などを重視する一方で、効果的な打開策を模索する首長らの姿が浮かび上がった。

 

 人口減少による影響を複数回答で聞くと、「空き家の増加」が75%で最多となり、「独り暮らし世帯の増加」(69%)、「農林水産業の衰退」(58%)、「集落やコミュニティーの衰退・消滅」(56%)が続いた。

 「空き家の増加」を選択した割合は規模の小さい自治体ほど多く、人口1万人未満では82%に達した。2015年に全面施行された「空家対策特別措置法」では、危険な空き家を市区町村が「特定空き家」に指定できることや、代執行の手続きなどが定められたが、所有者と連絡がつかずにそのままにされるケースも多い。空き家の存在は防災、防犯の両面でも問題があり、自治体の悩みの種だ。

 4年前の統一地方選にあわせて行った全国自治体首長アンケートでは、人口減少による影響(複数回答)で「空き家の増加」64%、「急激な高齢化の進行」62%、「農林水産業の衰退」46%、「集落の衰退・消滅」41%などだった。質問表現や選択項目が違うため、今回のアンケートとの単純比較はできないが、様々な分野で人口減少の影響が顕在化しているといえそうだ。

 今回、人口減少や少子化の対策で効果を上げている取り組みを複数回答で聞くと、「保育料や医療費補助などの子育て支援」が70%に達し、「移住者相談窓口開設など移住者への対応」39%、「地域おこし協力隊の募集・採用」36%などとなった。移住者への対応は注目を集めているものの、まだ十分な評価には至っていないようだ。4年前の調査では、人口減少や少子化、定住促進対策に関する取り組みを聞き(複数回答)、「子育て支援」94%、「企業誘致」65%、「街おこしイベントへの支援」39%、「移住者相談窓口開設」29%などだった。

 今回の調査では、特徴的な事例として、徳島県が「光ブロードバンド(高速大容量通信)の環境を生かし、都市部の企業のサテライトオフィスが進出した」と回答。石川県小松市は「公立大の開学で学生らが住み、にぎわいなどが生まれた」とした。

 

子育て支援 効果手応え

 「人口は減少していない」と答えたのは215自治体(14%)。この中には人口減少が進む地域に立地するところもあり、関係者は子育て支援策などの効果が出ているとみている。

 青森県東部にある六戸ろくのへ町(人口約1万1000人)は、人口の微増傾向が続いている。町は要因として、15歳までの医療費助成や、住宅新築時の建設費補助を挙げる。民間業者が分譲した住宅地に周辺自治体から移り住む人が相次いでいることも、増加につながっているという。

 鳥取県西部の日吉津村ひえづそん(人口約3500人)も年30人程度のペースで増えている。村は待機児童対策として、民間小規模保育施設の職員配置に補助金を出しているほか、育児相談などに応じる子育て支援センターを設置するなど、子育て政策に力を入れている。

 ただ、両町村とも平らな土地が多く、近隣の市のベッドタウンとして機能している面もある。ショッピングセンターにも近い。逆に、こうした地の利がない過疎地や山間部を抱える自治体では人口減少が顕著で、首長からは「様々な取り組みを行ってはいるが、具体的な効果は出ていない」などと苦悩するコメントが多く寄せられた。

 

復興・防災、インフラも争点

 統一地方選の争点として取り上げられるべきと考える課題を五つ以内で選んでもらうと、「子育て・教育環境の充実」が83%で最も多くなり、「出生率向上などの人口減少対策」(73%)、「医療・福祉の充実」(66%)と続いた。人口減少や日々の生活に関わる課題を首長らが重視していることがわかる。

 「震災・災害からの復興、防災対策」は43%、「道路などのインフラ(社会基盤)整備」は39%で、一定数の首長が重要課題として選んだ。

 「東京一極集中の是正、地方との格差解消」(36%)は、地域別でみると、東北(52%)や北陸・甲信越(49%)、中国(52%)が比較的高かった。「企業誘致などの経済・雇用対策」(51%)は、東京都内を除く関東の自治体で65%にのぼった。

 

「圏域」構想に温度差

中心市に施設…小自治体懸念

 人口減少が続くことを見据え、複数の自治体で構成される「圏域」を単位としたまちづくりの検討が、政府内で始まった。地域の中心となる都市に公共施設などを集中させ、「圏域」に予算や権限を配分する考え方だ。この方針についての首長の考えは、「賛成」「どちらかといえば賛成」が計39%で、「反対」「どちらかといえば反対」の計19%を上回った。

 ただ、人口5000人未満の216自治体に限ると、「反対」「どちらかといえば反対」の合計が31%となり、「賛成」「どちらかといえば賛成」の合計(24%)を上回った。小規模な自治体が、都市に財源や自主性を奪われないか不安視しているのがうかがえる。

 首長からは「地方を見捨てることにつながる」(奈良県東吉野村)、「地方創生の取り組みに逆行する」(岩手県葛巻町)といったコメントが出た。圏域化が新たな市町村合併につながることを懸念する声も相次いだ。

 一方、圏域の構成単位として想定される「連携中枢都市圏」をすでに周辺自治体と組む広島市は「施策の共同実施や行政資源の相互利用で住民サービスが向上する」と回答。富山市も「人口の拡散や流出を防ぐことができる」と、東京一極集中を是正する効果を期待した。

 今後ふさわしい自治体の枠組みを尋ねると、「現状の枠組みを維持」が53%に達し、「地方公共団体としての『圏域』を設ける」は23%。「市町村合併を進める」は6%だった。

 

消費増税 賛成58%

 10月に予定される消費税率の10%への引き上げについては、「賛成」58%、「反対」4%、「どちらともいえない」37%だった。

 ただ、人口1万人未満の自治体では「賛成」は49%にとどまり、「反対」は6%だった。首長からは「中山間地域では高齢者比率が高く、引き上げは住民生活を圧迫して地域の生産・経済活動を萎縮いしゅくさせる」といった意見が出された。離島にある自治体は「輸送費が物価に加算され、物価高になる」とのコメントを寄せた。

 

奪い合いでは解決せぬ…東京大教授 金井利之氏(自治体行政学)

 人口減少への危機感がいよいよ強く表れた調査結果だ。人口減少の影響として、「地場産業の衰退」、「集落の衰退・消滅」を選んだ首長が過半数に達した。4年前の同様の調査と比べても増加傾向にあり、過疎地からじわじわと、地域の存続が危ぶまれる段階に入っている。

 対策の内容も変わってきた。今回の調査では、「企業誘致」が35%に、「街おこしイベント支援」も11%にとどまった。具体的に実在する住民サービスの維持に手いっぱいで、成果の不確実な新規施策を打つ余力がなくなってきているのだろう。

 目を引いたのは「圏域構想」への考え方だ。「反対」「どちらかといえば反対」の合計が約2割を占めた。自治体首長は現政権の進める施策について否定的な意見を打ち出しにくいものだが、2割もの首長が否定的というのは驚きだ。

 構想はまだ不明な点もあるが、周辺部から行政サービスの撤退を促す可能性もある。自治体は場当たり的な批判に終わらせず、全国知事会・町村会などで意見を取りまとめ、自治体間での公平な財政保障を国に実現させる努力をしてほしい。

 統一地方選の争点で、今後老朽化や維持費の増大で深刻さを増す「インフラ整備」が6番目、人の命に直接関わる「貧困対策」が10番目というのは心配だ。医療・福祉や子育て対策が重要課題であるのは当然だが、首長には得票につながる分野以外にも目配りした施策をお願いしたい。

 自治体はそろそろ、自分のところが生き残ればよい、という考えを捨ててほしい。手厚い支援で移住者を引きつけたり、ふるさと納税の高額返礼品で寄付を集めたりして、自治体間で人やカネを取り合っても人口減少は解決しない。

 投票する有権者の意識も同様だ。目先の利益に惑わされず、将来を見据え、国全体の課題解決に向けた視点も持って、本当に必要な政策、候補を選ぶこと。統一地方選の機会に、地方自治への関心を高めてほしい。

 

 地方部・池上由高、宮下悠樹が担当しました。

 

質問と回答

(質問文一部要約、数字は%)

◆統一地方選で争点として取り上げられるべきと考える重要課題を選んでください。4月に選挙がない自治体は、選挙があるとして選んでください。(5つ以内)

・子育て・教育環境の充実 83

・出生率向上などの人口減少対策 73

・医療・福祉の充実 66

・企業誘致などの経済・雇用対策 51

・震災・災害からの復興、防災対策 43

・道路などのインフラ(社会基盤)整備

39

・東京一極集中の是正、地方との格差解消

36

・自治体の財政再建 31

・外国人労働者の受け入れ拡大と共生 13

・住民の所得格差是正と貧困対策 6

・政治とカネの問題、議員定数の見直しなどの議会改革 3

・その他 7   ・回答なし0

◆人口減少でどのような影響が出ていますか。(いくつでも回答可)

・空き家の増加 75

・独り暮らし世帯の増加 69

・担い手不足などによる農林水産業の衰退

58

・集落やコミュニティーの衰退・消滅 56

・耕作放棄地の増加や山林の荒廃 54

・後継者不足などによる地場産業の衰退

51

・児童・生徒数の減少に伴う小中学校の統廃合 49

・伝統芸能の継承者不足、祭りの存続危機

40

・中心市街地の衰退 39

・防災機能の低下 13

・水道など公共料金の値上げ 10

・その他 4   ・とくにない1

・人口は減少していない 14

・回答なし0

◆人口減少対策や少子化対策で、効果を上げていると感じる取り組みを選んでください。(いくつでも回答可)

・保育料や給食費、医療費補助などの子育て支援70

・移住者相談窓口の開設など移住者への対応 39

・地域おこし協力隊の募集・採用 36

・企業誘致 35

・起業や雇用の支援 34

・空き家バンクの活用、空き家の撤去 31

・新婚世帯への家賃補助、出産費補助 25

・婚活・妊活支援事業 25

・待機児童対策 23

・街おこしイベントへの支援 11

・ワークライフ・バランスの推進 8

・新幹線代補助など、遠方への通勤・通学の補助5

・男性の育児推奨事業 4

・その他   11

・とくにない 4   ・回答なし1

◆人口減少が進むと、どういった影響が出ると思いますか。(いくつでも回答可)

・必要な行政機能が賄えなくなり、住民サービスが低下する 87

・橋や道路、水道などのインフラ(社会基盤)が維持できなくなる 77

・議員の報酬や、議会定数の見直しが必要になる 26

・外国人を含め、移住者の受け入れが必要になる 23

・その他  6   ・とくにない1

・回答なし 1

◆政府は「平成の大合併」が一区切りしたとして、複数の自治体で構成する「圏域」を単位としたまちづくりを全国で促進する方針です。この方針について、賛成ですか、反対ですか。

・賛成 11 ・どちらかといえば賛成 28

・反対 5 ・どちらかといえば反対 14

・どちらともいえない 41

・回答なし 1

◆「圏域」構想をどのように見ていますか。(いくつでも回答可)

・インフラ整備や社会保障制度で自治体間が連携し、カバーしあえる 44

・行政権限や公共施設が中心市に集まり、周辺自治体の行政機能が低下する 35

・ブランド構築などに圏域として取り組むことで、地域の魅力が高まる 35

・公共施設が統廃合され、維持費の削減などにつながる 32

・主体があいまいで、自治体間の調整が困難になったり職員の事務量が増えたりする 31

・公共施設が統廃合され、住民サービスが低下する 22

・公共施設などが中心市に集まり、中心市のにぎわいにつながる 7

・関心がない 2

・その他 15   ・回答なし1

◆地方自治体の今後の枠組みでふさわしいのはどれですか(道州制構想を除きます)。

・都道府県、市町村、一部事務組合、広域連合などの現状の枠組みを維持する 53

・現状の枠組みを維持したうえで、市町村合併を進める 6

・現状の枠組みに加え、新しい地方公共団体としての「圏域」を設ける 23

・その他 16   ・回答なし2

◆水道事業の基盤を強化する改正水道法が昨年12月に成立し、運営権を民間事業者に売却する「コンセッション方式」の導入が可能となります。どう考えていますか。

・現時点では導入する必要はない 52

・現時点では導入の適否を判断できない

35

・今後導入を検討したい 2

・事業主体として導入を検討している 1

・その他 10   ・回答なし1

◆前問の回答の理由を選んでください。(いくつでも回答可)

・水道は住民の生命・生活に直結しており、安全面で民間の関与はなじまない 39

・民間に関与させると、撤退後の管理体制の構築に不安が出る 35

・民間に関与させると、料金が値上がりする可能性がある 33

・現状のままで良い 25

・経営ノウハウの導入でコスト減につながるなら、民間に関与させても良い 8

・自治体が監督するのであれば、民間に関与させても良い 7

・民間業者に他自治体での水道経営の実績があれば、関与させても良い 5

・その他 25   ・回答なし3

◆安倍内閣は今年10月、消費税率を8%から10%に引き上げる予定です。この方針に賛成ですか、反対ですか。

・賛成   58     ・反対 4

・どちらともいえない 37

・回答なし 1

 

 調査方法 47都道府県と1741市区町村の首長を対象に、1月に質問票を郵送し、インターネットによる回答方式で実施した。85.7%の1532自治体が回答した。小数点以下は四捨五入。0は0.5%未満。

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492626 0 統一地方選2019 2019/03/17 05:00:00 2019/09/19 15:07:59 旧別子山村は2003年に新居浜市と合併するまで、30年間「無医村」だった。合併を機に診療所ができ、週に1回、診察が行われている。写真は、患者の血圧を計る山岡伸三医師(10月4日午後2時35分、愛媛県新居浜市の別子山診療所で)=鍜冶明日翔撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190316-OYT1I50063-T.jpg?type=thumbnail

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4月21日(日) 衆院補、市区長・市区議、町村長・町村議選投票

※区長・区議は東京都特別区。

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