[スキャナー]自民、衆院補選に危機感…大阪ダブル選「維新包囲網」裏目に
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地域政党・大阪維新の会が仕掛けた大阪府知事・市長ダブル選は、府知事と市長が入れ替わる形で大阪維新が制した。自民、公明両党は「維新包囲網」を敷く戦略が裏目に出た。大阪都構想だけではなく、衆院大阪12区補欠選挙(21日投開票)や参院選の行方にも影響しそうだ。(政治部 田島大志、大阪社会部 大槻浩之)
野合批判
大阪ダブル選の敗北に自民党内では落胆が広がっている。甘利明選挙対策委員長は7日、「(大阪維新は)改革に前向き、(自民などは)現状を守るという受け取り方をされてしまった」と党本部で記者団に語った。
ダブル選は、自民推薦候補を濃淡の差こそあれ、立憲民主、国民民主、公明、共産各党が支援し、大阪維新対「反維新」の構図となった。これに対し、大阪維新は「理念、信念のない野合」(馬場伸幸副代表)と激しい批判を展開した。
自民の独自調査では一時、大阪市長選は横一線との結果が出ていた。党幹部は「1勝に手が届くかと思ったが、『野合批判』で保守層が離れた」と嘆く。府連は先月30日、「(候補は)共産党とは一切の関係は無く、応援要請等行っていない」とホームページに掲載したが、巻き返しはならなかった。
国政選並み
自民は今回、二階幹事長や岸田政調会長、甘利氏ら党幹部が連日大阪入りし、国政選挙並みの支援態勢を敷いた。二階氏は3度にわたって応援に入り、「この戦いには、大阪の明日がかかっている」と府連幹部らにハッパをかけてきた。
自民がこれほど力を入れたのは、2011年に府知事と大阪市長の座を大阪維新に明け渡して以降、弱体化した大阪での支持基盤の回復という目的に加え、9日告示の衆院大阪12区補選が控えているためだ。
大阪12区補選は自民、日本維新の会(維新)などの主要4候補が乱立する構図で、自民は「大阪ダブル選で維新が勢いに乗れば、自民候補は吹き飛ばされる」(党幹部)と警戒してきただけに、今回の結果に危機感が広がっている。
5日には下関北九州道路計画を巡る失言で、塚田一郎国土交通副大臣が辞任した。加えて、大阪12区と沖縄3区の衆院ダブル補選で敗れれば、夏の参院選に向けて風向きが変わる可能性もある。
官邸は距離
しかし、首相官邸は今回の大阪ダブル選に距離を置き続けた。安倍首相は憲法改正を巡って将来的な維新との連携を視野に入れているほか、菅官房長官が維新の松井一郎代表と会談を重ねるなど、懇意な関係を保っていることが背景にある。
自民党大阪府連内では選挙中、「官邸は我々と維新のどっちを向いているのか」と不満の声が漏れたが、政府・自民党内には「結果的に維新とのパイプが維持できた」(官邸筋)との見方もある。
公明党は、過去2回のダブル選は「自主投票」としてきたが、都構想協議での大阪維新との感情的な対立から、対決路線にかじを切った。選挙戦中も激しい批判の応酬を繰り広げた。ただ、斉藤幹事長は7日夜、「民意は
【大阪都構想】 大阪府と政令市の大阪市の関係を、東京都と東京23区をモデルに見直す制度改革。地域政党・大阪維新の会を率いた橋下徹氏が府知事時代に打ち出した。維新は、大阪市を廃止して複数の特別区を設置し、府と市の「二重行政」を解消すると主張している。

維新 都構想に壁…市議選 過半数届かず
「民意は大切にしてもらいたい。自民、公明にはこの結果をどう受け止めるか意見を聞きたい」
大阪維新の松井氏は7日夜の記者会見で、こう強調した。大阪維新は、党の存亡をかけた戦いと位置づけたダブル選を制し、大阪都構想の住民投票実施に向け、最低限の条件をクリアした。
今回のダブル選は、都構想議論の行き詰まりから、松井、吉村洋文の両氏が任期途中で辞職表明し、互いの立場を入れ替えて出馬したことによるものだ。
両氏は選挙戦で、2011年以降に実現した大阪・関西万博の誘致や二重行政解消などの実績をアピール。その上で、都構想について「今後も府・市一体の改革を進めていくために必要だ」と訴えた。
大阪維新はダブル選の勝利を受け、15年の住民投票でいったん否決された都構想の再挑戦を目指す。ただ、ダブル選と同時に投開票された府議選(定数88)では過半数を制する一方、大阪市議選(同83)では過半数に達しないことが確実になった。
住民投票の実施には、府・市の法定協議会と両議会で都構想の制度案を可決することが必要だ。大阪維新は改選前の府・市両議会で過半数に満たず、公明に協力を求めてきたが、住民投票の実施時期を巡る協議が決裂。大阪維新は両議会での単独過半数を目指し、府議選に55人、市議選に43人を公認した。
松井氏は両議会で単独過半数を取れば、任期中に住民投票に踏み切る構えだった。市議会では、都構想の制度案を可決するには他会派の協力が不可欠で、大阪維新は公明との再協議を求める公算が大きい。
日本維新の会は12年の衆院選以降、関西で公明が候補を立てる6選挙区で、独自候補擁立を見送る「すみ分け」を図っている。すみ分けの継続を交渉材料にする案も浮上しているが、「ここまで対立した以上、再交渉は簡単ではない」(大阪維新幹部)とみられ、住民投票実現に向けた道のりは険しいままだ。