[参院選2019]憲法議論 前進狙う…自民公約 消極的な野党を批判

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参院選に向けた公約を発表する自民党の岸田政調会長(7日午後、自民党本部で)
参院選に向けた公約を発表する自民党の岸田政調会長(7日午後、自民党本部で)

 自民党は、7日に発表した夏の参院選の公約で「早期の憲法改正を目指す」とうたい、国会での議論推進の是非などを争点化する考えを打ち出した。選挙戦を通じ、国会で憲法改正の議論に応じない一部野党の姿勢を批判し、秋の臨時国会以降の審議の進展につなげたい考えだ。

 「憲法改正は国会が発議するものだから、国民に国会の議論への理解を深めてもらうべきだ。党内外の議論を深め、国民の理解を得て早期の改正を目指す」

 自民党の岸田政調会長は7日の公約発表記者会見でこう述べ、憲法改正の議論を前に進める決意を強調した。

 自民党は憲法改正を重点項目の6本柱の一つに位置づけた。2017年衆院選の公約と同様の位置づけだが、今回は記述を倍程度に増やした。衆参両院の憲法審査会での議論について、17年は単に「深める」としていたが、今回は「国民のための論議を丁寧に深める」とした。

 自民党は昨年3月、〈1〉自衛隊の根拠規定の明記〈2〉緊急事態対応〈3〉参院選の合区解消〈4〉教育充実――の4項目の改憲案をまとめた。しかし、この改憲案は、立憲民主党などが国会での憲法論議に消極的であるため、憲法審で提示すらできていない。

 自民党憲法改正推進本部関係者は「参院選で改憲の必要性に加えて議論促進を訴え、勝利すれば、足踏み状況を打開できる」と期待する。

 安倍首相(党総裁)が掲げる「20年新憲法施行」という目標期限の明記は見送った。「スケジュールありきの憲法改正」という野党の批判をかわす思惑がある。

 一方、自民党は今回の公約で、17年衆院選に引き続き、「外交・防衛」を重点項目のトップに据えた。党公約作成委員会内では、経済をトップに置く案も浮上していたが、岸田氏が3日夜、首相の私邸を訪ね、会談した際に最終的に決定された。

 岸田氏はこの判断について7日の記者会見で、28~29日に大阪で主要20か国・地域(G20)首脳会議が開かれることなどに触れ、「日本が国際社会で大きな責任を果たしていかなければいけない時期に来ている点を重視した」と説明した。

 このほか、農業関係者が多い全国32の改選定数1の「1人区」対策として、農業分野での技術革新を進めることを明記。「新たな政策、課題に次々と挑戦し続ける」(岸田氏)として、「女性活躍」や「地球環境」も重点項目に取り上げた。

 

参院選 自民党公約要旨

 外交・防衛

 ■国際社会の結束・ルールづくりを主導する外交

 G20(主要20か国・地域)大阪サミットの議長国として、今後も貿易や環境など世界の課題解決に向けて結束を促す▽日本が中心となって、自由で公正な貿易、誰もがアクセスできる良質なインフラ(社会資本)、信頼あるデータ流通をはじめ、21世紀の新たなルールづくりを主導する

 ■力強い外交・防衛

 日米同盟をより一層強固にし、ゆるぎない防衛力を整備することで、国民の命や平和な暮らし、領土・領海・領空を守り抜く▽米国、豪州、インド、ASEAN(東南アジア諸国連合)、欧州など普遍的価値を共有する国々との連携を強化し、「自由で開かれたインド太平洋」を実現する▽米国はじめ国際社会と緊密に連携し、北朝鮮の核・ミサイルの完全な放棄を迫るとともに、最も重要な拉致被害者全員の帰国を目指す▽ロシアとは領土問題を解決し、日露平和条約の締結を目指す。中国等の近隣諸国とは、わが国の国益を十分踏まえた外交を展開し、戦後日本外交を新たなステージに導く

 

 強い経済

 ■GDP(国内総生産)600兆円経済の実現

 成長戦略、生産性革命、人づくり革命など、政策を総動員し、GDP600兆円経済、成長と分配の好循環を創る

 ■イノベーションを社会実装

 第4次産業革命の資源である「データ」を利活用するための戦略的体制整備を進め、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)等を活用し、生産性の向上と、農業、医療、教育など各分野でイノベーションを創出する。キャッシュレス、自動走行など、暮らしをバージョンアップする

 ■新たなフロンティアへの挑戦

 宇宙・海洋資源、G空間、バイオ、量子技術、コンテンツなど、新たな産業フロンティアを官民挙げて切りひらく

 ■中小企業・小規模事業者支援

 中小企業・小規模事業者を、固定資産税ゼロ、事業承継時の相続税ゼロなど、かつてない制度で応援する▽下請けいじめの撲滅、適切な利益分配の実現に向け、産業・業種ごとに取り組みを強化する▽事業承継の障害とならないよう、金融機関による新旧経営者からの保証の二重徴求を原則認めない▽深刻な人手不足に対応するため、設備投資、IT(情報技術)導入など生産性向上を支援するとともに、外国人材の受け入れを進める

 ■エネルギー・環境

 エネルギーの安定供給と低コスト化を両立するための技術革新を進め、エネルギーミックスの確実な実現とエネルギー自給率の向上に取り組み、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献する

 

 安心社会

 ■人生100年時代の安心社会

 支える側と支えられる側のリバランスなどを通じて、年金をはじめ人生100年時代にふさわしい社会保障制度を構築する▽小児・周産期・救急医療の確保、医師偏在対策、介護・福祉人材の確保等を進め、全国どこでも安心して医療・介護・障害者福祉等が受けられる体制を整備する

 ■女性活躍を推進

 女性に対する就労支援や政治へのさらなる参画を進める▽イクメンやイクボスなど男性の意識改革と職場風土の改革を促し、家事・育児を適切に分担する社会を推進する

 ■子供の未来・安全に、大胆に投資

 待機児童ゼロに向け取り組みを一層加速する。10月から3~5歳のすべての子供たち、0~2歳の住民税非課税世帯の子供たちの幼児教育・保育を無償化する▽来年4月から、真に経済的支援が必要な子供たちの高等教育無償化、私立高校の実質無償化を実現する。学校ICT(情報通信技術)環境を抜本的に改善する▽児童相談所の体制強化等により児童虐待の根絶を図るとともに、昨今の交通事故や痛ましい事件を踏まえ、総合的な子供の安全対策に徹底的に取り組む▽子供の現在・将来が生まれ育った環境に左右されない、実効性ある子供の貧困対策に取り組む

 ■高齢者の皆さんが安心して暮らせる社会保障

 10月から、収入の少ない年金生活者に、年間最大6万円の福祉給付金を支給する。介護保険料の負担を3分の2に減額する▽認知症基本法案等を制定し、認知症の方が尊厳を保持しつつ安心して暮らせる社会の実現を目指す

 

 地方創生

 ■地方の活性化

 若者の地方での起業・就職に最大300万円を支給するなど、地方への人の流れをつくるとともに、自動走行、遠隔医療、ドローン宅配などを地方から展開して、ローカル・イノベーションを推進する

 ■農林水産業

 TPP(環太平洋経済連携協定)や日EU・EPA(経済連携協定)の下でも農業者が安心して再生産に取り組めるよう全力で応援するとともに、引き続き国益としての農業を守る▽家族農業、中山間地農業など多様で多面的な農業を守り、地域振興を図る▽米価安定のために、水田フル活用を推進する▽森林環境譲与税を活用して、美しい森を守り、林業の成長産業化を進める▽「広域浜プラン」に基づき、新しい漁船の導入など、若者が働きたくなる漁業環境を整備し、浜の皆さんの生産性向上への取り組みを支援する

 ■観光

 2020年の外国人観光客4000万人目標を達成し、30年6000万人を目指して、地域の特色ある文化・歴史をはじめ地域の観光資源を磨き上げ、戦略的な訪日プロモーションを推進する

 

 復興・防災

 ■復興の加速

 東日本大震災から8年、地震・津波被災地域の復興については、20年度までにやり遂げるとの強い決意で取り組む▽福島の復興については、復興・創生期間後も復興が成し遂げられるその日まで、国が前面に立ち、一日も早い復興を目指して取り組む▽熊本地震、相次いだ豪雨災害、北海道胆振(いぶり)東部地震など、被災地に対し、一日も早い、生活・生業の復興を進める

 ■防災・減災、国土強靱(きょうじん)化

 近年の気象変化に対応し、7兆円規模の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を着実・迅速に進める▽様々な自然災害時にもライフラインを維持できるよう、電力、道路・鉄道・空港・港湾などの交通・物流インフラの強靱化に取り組む

 ■地球環境

 災害多発の原因となっている気候変動に対応するため、フロン類の排出抑制やESG(環境・社会・企業統治)金融などを推進し、30年温室効果ガス26%削減、50年80%削減を経て脱炭素社会の実現に取り組む▽廃プラスチックをはじめ、国内の資源循環体制の構築に取り組む

 

 憲法改正

 「現行憲法の自主的改正」は結党以来の党是であり、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つの基本原理はしっかり堅持し、初めての憲法改正への取り組みをさらに強化する▽わが党は改正の条文イメージとして、〈1〉自衛隊の明記〈2〉緊急事態対応〈3〉合区解消・地方公共団体〈4〉教育充実――の4項目を提示している▽憲法改正に関する国民の幅広い理解を得るため、党内外での議論をさらに活発に行う。衆参の憲法審査会において、国民のための憲法論議を丁寧に深めつつ、憲法改正原案の国会提案・発議を行い、国民投票を実施し、早期の憲法改正を目指す

 

自民党「政策BANK」要旨

 1 外交・安全保障

 わが国の名誉と国益を守るための戦略的対外発信を強化するなど、韓国・中国等の近隣諸国との課題に適切に対処する▽日米安保体制の抑止力を維持しつつ、沖縄等の基地負担軽減の実現のため、普天間飛行場の辺野古移設や在日米軍再編を着実に進める

 2 経済再生

 省庁横断的かつ多様・高度な専門家で構成される専門組織・司令塔として「デジタル市場競争本部(仮称)」を設置し、世界に先駆けたイノベーションを生み出す▽最低賃金は、地域経済や中小企業・小規模事業者の実情、地域間格差に配慮しつつ、年率3%程度を目途として、全国加重平均が1000円になることを目指す▽財政再建を着実に実行し、25年度の国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化を目指す。同時に債務残高対GDP比の安定的な引き下げを目指す▽全世代型社会保障の構築や財政健全化に向け、本年10月に消費税率を10%に引き上げる。軽減税率制度実施には万全の準備を進める▽消費税率引き上げに際し、経済への影響を乗り越えるため、キャッシュレス化推進に向けたポイント還元の実施や、低所得者・子育て世帯対象のプレミアム付き商品券の発行、住宅や自動車購入への予算・税制上の支援など、十二分な対策を講じる

 3 人生100年時代

 在職老齢年金の廃止・縮小、社会保険の適用ルールの見直しを進めるとともに、多様で柔軟な働き方を推進する▽厚生年金の適用拡大、年金受給開始時期の選択肢の拡大、私的年金の活用促進等を進める▽海洋ごみ対策などを推進し、30年までに使い捨てプラスチックの25%排出抑制を目指す

 4 地方創生

 地域での若者の修学・就業を促進するため、地域の中核的産業の振興や専門人材育成等を行う優れた取り組みを「地方大学・地域産業創生交付金」により支援する▽TPPや日EU・EPAの発効による農林漁業者の不安を払拭(ふっしょく)するため、経営安定に万全を期す。日米物品貿易協定は、18年9月に日米首脳間で、過去の経済連携協定で約束した内容が「最大限」と確認されたことを踏まえ、しっかり対応する▽IR(統合型リゾート)整備法に基づき、様々な懸念に万全の対策を講じて、大人も子供も楽しめる安心で魅力的な「日本型IR」を創り上げる

 5 災害対策・国土強靱化

 7兆円規模の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を3年間集中で実施し、災害に強い国づくりを推進する

 6 憲法改正 (公約と同じ)

無断転載禁止
627097 0 参院選2019 2019/06/08 05:00:00 2019/09/19 15:38:13 参院選公約の発表に臨む自民党の岸田政調会長(7日午後5時50分、東京都千代田区の自民党本部で)=米山要撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190608-OYT1I50000-T.jpg?type=thumbnail

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