[視点 参院選2019]<1>「課題先進国」成長の好機

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高橋進 日本総研チェアマン・エメリタス

たかはし・すすむ 日本総合研究所調査部長、理事長などを経て2018年から名誉理事長に当たる現職。05年から07年に内閣府政策統括官、13年から19年1月まで政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めた。66歳。
たかはし・すすむ 日本総合研究所調査部長、理事長などを経て2018年から名誉理事長に当たる現職。05年から07年に内閣府政策統括官、13年から19年1月まで政府の経済財政諮問会議の民間議員を務めた。66歳。

 7月4日にも公示される参院選の主な論点について、識者に考えを聞いた。

    ◇

 安倍内閣が経済政策「アベノミクス」を始めて6年が過ぎ、日本経済は「デフレではない」と言える状況になった。だが、経済の地力を示す潜在成長率は高まっていない。

 世界的にIT(情報技術)・AI(人工知能)革命が進む中、日本の産業はやや劣勢に立たされている。

 どうやって日本経済の成長力を高めていくかが大きな課題だ。参院選でしっかり論じてほしい。

 世界で最も高齢化が進む日本は「課題先進国」と言われる。これを経済成長への好機ととらえるべきだ。

 医療や介護分野でITやAIを活用する余地は大いにある。国民皆保険の日本には、医療や介護に関する非常に質の良いデータがある。こうしたデータの活用などを通じて、課題解決に向けた新たな商品やサービスを生み出すことが求められる。日本に続いて高齢化が進む海外諸国にも展開できるだろう。

 国の財政では、高齢化で膨らむ社会保障費への対応が重要になる。現状の社会保障制度は、国が多額の借金をして支えている。返済するのは子や孫の世代だ。将来世代の負担を減らすためにも、政府が10月に予定する消費税率10%への引き上げを実施する必要がある。

 同時に医療や介護の効率化を進め、資産や所得に応じた給付と負担のあり方も考えなくてはならない。

 消費増税の景気への影響が懸念されるが、政府は様々な対策を講じており、景気を悪化させずに乗り切れる素地は整っている。

 不安材料は海外要因だ。米中摩擦の先行きは読みにくい。海外のリスクに備えるためにも、先端技術の活用を進め、国内需要を高めることが大切だ。

働き方改革 生産性向上を

 現状の日本経済は緩やかな回復が続いている。企業の設備投資と個人消費が比較的堅調なのが要因だ。

 企業の競争力を高めるには政府の役割も大きい。

 インターネットを介して資産を共有する「シェアリング・エコノミー」の拡大など、規制改革を一層、進める必要がある。

 産官学の連携もポイントになる。日本はこの三者の連携が必ずしもうまくいっていない。政府が体制を整え、活発な交流を促すべきだ。

 個人消費は決して力強いとは言えない。その理由として、賃金の増え方が鈍いことがある。現在、女性の収入が全体に増える一方、男性の中間層が細り、低所得の男性が増加していることには留意しなくてはならない。

 欧米では従来、所得格差の問題が政治的なテーマになってきたが、日本ではあまり問題視されてこなかったと言える。低所得層への支援など、格差是正策について議論を深めることが欠かせない。

 安倍内閣が働き方改革を積極的に進めてきたことは高く評価できる。企業や社会に雇用を巡る様々な問題がくすぶっていたが、解決できていなかったからだ。

 ただ、働き方改革は長時間労働の削減や有給休暇の取得促進が目的だと考える人がいまだに多いのは問題だ。働き方改革の本丸は、企業の経営改革を通じて人材を育て、生産性を高め、従業員の処遇を改善することにある。

 円滑に転職できる環境を整備し、非正規社員の待遇は、非正規という言葉をなくすくらいまで改善すべきだ。外国人労働者を日本人と同等に処遇することも大切だ。

 今後、働き方改革の対象は中小企業にも広がる。実効性ある働き方改革に向けた論戦に期待したい。

 (聞き手・編集委員 山崎貴史)

 企業益増大 GDPは小幅

 第2次安倍内閣の発足以降、日本企業の業績は大きく改善している。 財務省の法人企業統計によると、全産業の経常利益は2012年度の59兆円から17年度には96兆円と62%も増えた。ところが、国の経済規模を示す名目国内総生産(GDP)は、12年度の494兆円から17年度は547兆円と10%の伸びにとどまる。 法人企業統計は企業の単体決算の集計だ。経常利益には海外子会社からの配当や利息が含まれる。これに対し、GDPは国内の経済活動の結果を示す。 国内の人口が減る中、企業は積極的に海外に進出している。このため、海外ビジネスの成果も反映する経常利益は大幅に増えたが、GDPの伸びは小幅で推移している。 雇用や賃金など国民生活に広く影響するのはGDPの伸びだ。国内の成長力を高めることが急務となっている。

無断転載禁止
653796 0 参院選2019 2019/06/24 05:00:00 2019/09/19 15:40:20 インタビューに応じる日本総合研究所の高橋進・名誉理事長(19日、東京都品川区で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190624-OYT1I50022-T.jpg?type=thumbnail

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