[視点 参院選2019]<2>憲法改正 野党は対案を…境家史郎 首都大学東京教授

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さかいや・しろう 専門は現代日本政治。政治学者の蒲島郁夫・熊本県知事に師事した。東大博士(法学)。東大社会科学研究所准教授などを経て現職。著書に「憲法と世論」。40歳
さかいや・しろう 専門は現代日本政治。政治学者の蒲島郁夫・熊本県知事に師事した。東大博士(法学)。東大社会科学研究所准教授などを経て現職。著書に「憲法と世論」。40歳

 自民党が、国政選挙の公約の中で憲法改正を掲げるようになって久しい。今回の参院選でも、憲法改正は公約の六つの柱の一つに据えられた。かつて議論することすらタブー視されてきた憲法を巡る状況は、大きく変わった。 自民党は、自衛隊の根拠規定の明記、緊急事態条項の創設など4項目からなる改正案をまとめ、衆参両院の憲法審査会での議論を呼びかけているが、全く進んでいない。 このままでは、憲法の文言と現実の政策とのギャップが一層拡大する一方で、最高法規性に疑問を持たれかねない状況だ。憲法のあり方について、与野党で真剣に検討を進めるべきだ。 憲法改正は、最終的に国民投票で決まるものだから、国会議員以上に一般有権者がカギを握る。国民投票の際に世論が大きく割れるのが望ましくないことは、2016年の英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票が残した教訓だ。世論が割れれば、政治は大混乱に陥るだろう。 改正の発議は制度上、衆参各院の3分の2以上の多数で可能だが、実際には、より多くの賛成を得ることが望ましい。有力な野党が反対すれば、有権者の間でも激しい亀裂が生じるからだ。憲法改正は、与党だけで成立させられる法案と異なり、野党の側に強力な事実上の「拒否権」があることに注意が必要だ。 重要なのは、野党側が積極的に対案を示すことだ。歴史的に見ても、改正論議が進展したのは、2000年代初頭の民主党など、野党が積極的に改正論を提起した時だ。自民党は今回の選挙戦を通じて、改正に消極的な一部野党を批判する構えだが、与党案でなく野党案をベースに論戦を交わして発議まで持っていく方が、国民投票での混乱は生じにくいだろう。

「憲法論議拒否」 自民に利

 野党第1党である立憲民主党が、自民党の呼びかける9条を含む憲法改正論議に乗ってこなければ、議論は進まない。それは「改憲阻止」が野党の最終目標であるならば合理的だが、実は、自民党を利していることに、野党には気づいてもらいたい。

 9条を巡る改正論議を拒否し続ければ「改憲には絶対反対」という一定の有権者からは支持を得られるだろう。だが、野党支持者の中には、現実的な議論を求める層も必ず存在するから、野党は分断される。従って、自民党は永久に安泰だ。

 これは、野党が社会党や民社党に分断され、常に自民党が与党の座を占め続けた「55年体制」の構図と同じだ。今の政界は、55年体制の再来にすら見える。

 安倍首相による野党批判が厳しく、与野党が接点を見いだしづらくなっていることも、憲法改正を難しくしている。現代政治では「敵と戦っている姿勢」を示す強いリーダー像が求められる傾向がある。

 小泉政権は自民党内に敵を見いだしたが、安倍政権では党内に強敵が見当たらず、非難の対象は、もっぱら外部になっている。

 世論調査の結果を見ると、憲法を「改正する方がよい」という回答は、2000年代初頭には「改正しない方がよい」を大きく上回っていたが、近年は拮抗きっこうしている。これは、改正の主な対象が、小泉政権の頃には統治機構改革だったのに対し、最近は、昭和時代のように、主に9条に焦点が当たるように、回帰してきた結果だろう。

 世論の理解は、国会議員や有識者といった政治エリート層の論じ方次第で、大きく変わる。いずれ政権交代を目指すなら、野党こそが現実的な憲法論議を主導すべきであり、参院選の論戦でも、そうするべきではないかと、私は考える。(聞き手・調査研究本部 舟槻格致)

改正賛成 やや多数で推移

 読売新聞社が毎年実施している憲法に関する全国世論調査では、「改正する方がよい」とする回答が、1990年代に入り増加した。2010年頃になると、改正賛成派と反対派の比率が接近し、最近は、賛成派が反対派を若干上回る状況が続いている。

 今年の調査で改正・追加すべき項目を尋ねたところ、「自衛のための軍隊保持」(41%)、「健全な財政の維持」(35%)、「教育の充実」(32%)、「良好な環境で生活する権利」(29%)などが上位を占めた。これに対し「首相が衆議院を解散する権限」は7%、「緊急事態における国会議員の任期延長」は5%にとどまった。

 各党に今求められているのは、改正すべきか否かの論争ではない。どの項目を具体的にどう改めるか、国民の幅広い合意形成につながる議論ができるかどうかが、問われている。

 

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655651 0 参院選2019 2019/06/25 05:00:00 2019/09/19 15:40:19 インタビューに答える境家史郎・首都大学東京教授(3日、東京都八王子市で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190624-OYT1I50073-T.jpg?type=thumbnail

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