[視点 参院選2019]<3>中国軍拡への対応力 大事…五百旗頭真 兵庫県立大理事長

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いおきべ・まこと 専門は日本政治外交史。神戸大教授、防衛大学校長、東日本大震災復興構想会議議長、熊本県立大理事長などを経て現職。著書に「戦後日本外交史」など。75歳。
いおきべ・まこと 専門は日本政治外交史。神戸大教授、防衛大学校長、東日本大震災復興構想会議議長、熊本県立大理事長などを経て現職。著書に「戦後日本外交史」など。75歳。

 今日の世界は、秩序の担い手が不在となり、どう崩れるか本当にわからない。特に米中の対抗関係は、経済と政治の両面にわたりすみ分け不可能な点で、米ソ冷戦以上だ。中国は先端技術、軍事技術の面で米国に挑戦しており、米国はそれを許さない決意を固めている。

 戦争という選択肢は合理的ではなく、どこかで話をつけなければいけないが、簡単ではない。かつては欧州が米ソの関係調整に役割を果たしたが、今では欧州の力は中国に届かず、トランプ米大統領も欧州に耳を傾けない。

 戦後、日本外交が大国間に割って入った例はほとんどない。安倍首相は長期政権の中で、米国との基軸関係をしっかり強化しながら、朝鮮半島を例外として世界のほとんどの国と良い関係を築いている。先進7か国(G7)による主要国首脳会議などで米欧関係を調整したこともある。今後、米中関係に前向きの役割を果たして秩序再編ができるかどうかで、首相の歴史的価値が定まるだろう。

 中国はすさまじい軍拡を続け、それを背景に尖閣諸島(沖縄県)の現状変更や南シナ海の支配拡大を試みている。日本からは簡単に奪うことは難しい、侮りがたい相手だと思わせるような対応力を持っていることが大事だ。

 政府は、最新鋭ステルス戦闘機F35に長距離巡航ミサイルを搭載し、配備する方針を決めた。昔だったら専守防衛を踏み越したといって大騒ぎになったかもしれないが、世論は案外静かだ。北朝鮮や中国の危険を相当現実的に感じているのだろう。

 中国は、日米が連携して対中強硬姿勢を打ち出すことを嫌っており、日本との関係改善を図っている。何をしたら国際社会は許さないのかという基準を中国に学んでもらい、「協商」関係を作り出すべきだ。

国際協調の守り手担う

 世界が直面する問題は複雑化する一方だが、世界の人々には逆にあいまいさに耐える力がなくなってきている。単純に白か黒かの答えを決めて、自分は正義、相手は悪とする議論が多い。

 日本外交が敵か味方かの二分論に陥っていないのは幸いだ。安倍首相は2012年以降、80か国・地域を訪問してそれぞれのトップと前向きの関係を作る努力を重ねている。

 米国のトランプ大統領と仲が良すぎるという批判があるが、首相は、「TPP(環太平洋経済連携協定)嫌い」「欧州嫌い」といったトランプ氏の反国際主義の姿勢に付き従っているわけではない。米国が抜けたTPP11をまとめるなど、国際協調の守り手になっている。

 日米貿易交渉でトランプ氏はTPP水準以上を求めているが、自ら離脱しながら特別待遇を求めるのはいかがなものか。首相の手さばきが見ものだ。

 ロシアとの北方領土交渉は、ロシアが第2次世界大戦後に実効支配した4島全部を返すというのは考えにくい。2島返還に加え、共同経済活動など日本にも意味のある活動圏を作れればよいのではないか。解決がないのに首相がプーチン大統領と会談を重ねていることは無意味ではなく、中国などに対する日本外交のカードになり得る。

 北朝鮮は核、ミサイルによって再度、注目を集めようとするかもしれないが、世界は以前のように揺れないだろう。非核化が手詰まり状況でも、その交渉と日本人拉致問題の協議を並行して進めるのは日本政府としての責務だ。

 首相のイラン訪問は、けんかの仲裁の難しさを改めて示した。簡単に成果が出るものではない。タンカー攻撃が行われたが、リスクをとる外交の経験を重ねながら、日本と人類にとっての大事である米中関係に建設的な役割を担うことを期待したい。(聞き手・政治部 小川聡)

首相の外国訪問 歴代最多

 安倍首相の外国訪問は、歴代首相の中で最も多い。2012年の第2次安倍内閣発足後、首相は80の国・地域を訪問し、のべ数では167に及ぶ。日数でみると、年平均で50日余りを外国出張にあててきた。

 日本の首相は通常、国会審議や内政の課題を優先し、外国訪問は控えがちだ。安倍首相の直近の5人の首相たちは、在任期間が短かったこともあり、10前後の国・地域しか訪問していない。

 安倍首相の外国訪問をめぐっては、世界の首脳たちとの緊密な関係作りに役立っているとの評価の一方、野党議員からは「国会出席の義務を軽視している」「費用に見合う国益を達成していない」などと批判する声が出ている。

 今年の通常国会では、野党が日米貿易交渉や日露・日朝関係について予算委員会での説明を求めたが、4月以降、同委は一度も開かれなかった。

 参院選で各党には秩序が揺らぐ世界の中で日本がいかなる役割を果たし、国益につなげていくのかという骨太の議論が求められる。

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657721 0 参院選2019 2019/06/26 05:00:00 2019/09/19 15:40:16 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190626-OYT1I50017-T.jpg?type=thumbnail

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