解散風止めた「年金」…同日選見送り、衆院で議席減リスク

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 安倍首相は、参院選に合わせて衆院解散・総選挙を行う「衆参同日選」を見送った。解散風が収束するまでの経緯を検証する。(敬称略)

 

高揚

 「こんなに盛り上がるなんて、正直驚いたよ」

 4月20日、衆院大阪12区補欠選挙の応援に入った安倍は、車に向かって手を振る人たちの熱気を感じ、高揚気味に周囲に語った。

 4月1日の新元号「令和」公表による祝賀ムードの余波もあり、街頭演説では歓声が上がった。安倍の脳裏に浮かんだのは、2013年の参院選だった。政権奪還後初めての参院選で与党は歴史的大勝を収め、衆参のねじれを解消した。

 「衆院を戦えば280~290議席は行くんじゃないか」。補選で自民党候補は敗れたが、安倍は興奮冷めやらぬ様子だった。そんな安倍の背中を押したのが、盟友の麻生副総理だった。

 「本気で憲法を改正したいのですか。それなら、衆院解散は10月の消費増税前しかタイミングはないですよ」。4月30日、東京都内の安倍の私邸を訪ねた麻生は、同日選を強く進言した。

 悲願の改憲に向け、同日選で勝てるかどうか。自民党が5月上旬に行った参院選の情勢調査は、改選議席124のうち60議席に届きそうだという結果が出た。

 「改憲論議に応じない野党の姿勢の是非」を争点に据えて衆院解散に打って出て、自民、公明の与党と改憲勢力で、国会発議に必要な3分の2以上を確保すれば、改憲に大きく前進する――。安倍は「勝てる時に選挙をやるのが総理・総裁の仕事だ」と周囲に息巻いた。首相周辺は解散に備え、複数の選挙日程を検討した。

 

大義

 自民党内では「改憲の是非は解散の大義として無理がある」との声が強かった。代わりにささやかれたのが、野党が内閣不信任案を提出すれば解散するというシナリオだ。

 菅官房長官は5月17日の記者会見で、不信任案提出が大義になるかと問われ、「当然なる」と発言した。永田町には「菅氏も解散論者になった」(自民党幹部)と情報が飛び交い、解散風はさらに強まった。

 しかし、実際は、菅は一貫して解散には慎重だった。菅が太いパイプを持つ公明党の支持団体・創価学会は、学会員に負担の重い同日選に反対していた。「総理は同日選をやりませんよ」。菅は創価学会や公明党幹部に何度も説明した。「大義になる」発言の真意は、「野党をけん制するためだった」(菅氏周辺)。

 解散風に右往左往する与野党を眺めつつ、安倍は思案を巡らせていた。5月30日の経団連の会合では、「風というのは気まぐれで、誰かがコントロールできるようなものではない」と解散風をあおってみせた。

 

収束

 風向きを変えたのが「老後の生活資金に2000万円が必要」とする政府の金融審議会の報告書だ。金融庁が6月3日に公表すると、野党は「年金不安」と絡めていっせいに批判。地上配備型迎撃システム「イージスアショア」配備に関する調査ミスの発覚も、世論の反発を招いた。

 6月上旬の自民党本部の参院選情勢調査では、その悪影響が数字に表れ始めていた。衆院選で過半数を得ても、現有議席284を減らせば、「負け」のレッテルを貼られる。ひとたび党内の求心力を失えば、改憲も危うくなる。

 「衆院は議席を減らしてしまう。参院選だけでも十分戦えるのに、解散する必要はない」。12日からのイラン訪問を前に、安倍はほぼ腹を固めた。イランから帰国した翌日の15日、麻生がひそかに首相公邸に入り、「いま解散すべきですよ」とさらに説得したが、安倍は首を縦にふらなかった。麻生も矛を収めた。

 安倍は21日、首相官邸で公明党の山口代表と党首会談を行った。

 「G20は落ち着いた政治状況の中で、安定した内閣で迎えるべきだ」。山口は28~29日に大阪で開かれる主要20か国・地域(G20)首脳会議に触れ、こう安倍に伝えた。衆院を解散した状態で外国の首脳を受け入れるわけにはいかない――というわけだ。

 解散見送りの意向を固めていた安倍に異論はなかった。2人は参院選で「政治の安定」を自公両党で訴えることも確認した。

 25日午後、衆院で内閣不信任決議案が否決されると、安倍は首相官邸で麻生と25分間会談した。話題はもっぱら、「次の衆院解散はいつするか」だった。2人の視線は既に、参院選後の政局に向いている。

◆衆院解散の判断を巡る主な経緯

 4月 1日 新元号「令和」発表

   20日 安倍首相が衆院大阪12区補欠選挙の応援演説

   30日 首相と麻生副総理が首相私邸で会談

 5月17日 菅官房長官が記者会見で、野党の不信任決議案提出は解散の大義に「当然なる」と発言

 6月 3日 金融庁が「老後に約2000万円必要」とする金融審議会の報告書を公表    5日 防衛省が、地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の配備候補地の調査にミスがあったと発表

   12日~14日 首相がイランを訪問

   15日 首相と麻生氏が首相公邸で会談

   19日 首相が党首討論で「(衆院)解散という言葉は頭の片隅にもない」と発言

   21日 首相が公明党の山口代表に、衆参同日選を見送る意向を伝える

   25日 首相が麻生氏と首相官邸で会談し、次の解散の機会について意見交換

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659273 0 参院選2019 2019/06/27 05:00:00 2019/09/19 15:40:12 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190627-OYT1I50000-T.jpg?type=thumbnail

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