[視点 参院選2019]<4>社会保障 支え手増やせ…清家篤 日本私立学校振興・共済事業団理事長

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せいけ・あつし 前慶応義塾長。専門は労働経済学。2018年4月から現職。政府の社会保障制度改革推進会議の議長も務める。65歳。
せいけ・あつし 前慶応義塾長。専門は労働経済学。2018年4月から現職。政府の社会保障制度改革推進会議の議長も務める。65歳。

 少子高齢化が進み、年金や医療、介護など社会保障給付の総額はすでに年120兆円を超えている。日本を世界有数の長寿国に導いた社会保障制度を持続可能なものにし、将来世代にしっかり引き継いでいくため、着実に改革を進めなければならない。

 人口が減少していく中で、社会保障制度を持続可能なものにするために最も大切なのは、女性や高齢者の就労を進めて、制度の支え手を増やすことだ。働いて保険料や所得税を納めることで、支える側に回ることができる。

 子育て支援策では、女性が子どもを産み育てながら働き続けられるように、保育所の待機児童をなくす必要がある。

 高齢者が増え、親の介護を理由にした「介護離職」も増える恐れがある。介護サービスを充実させ、中高年の介護離職を防がなければならない。

 高齢者の就労を促すためには、65歳を超えても様々な形で働けるような環境を整えることが重要だ。働く意思と能力のある人が、年齢に関係なく、その能力を発揮できるような「生涯現役社会」を実現しなければならない。

 社会保障のサービスを充実させたければ、税金や保険料の負担を増やす必要がある。負担増を抑えたければ、サービスを効率化しなければならない。将来世代にこれ以上、ツケを回さないために、社会保障の財源として、消費税率のさらなる引き上げの議論は避けて通れない。

 国民が人生設計の前提としている社会保障制度は、長期的に安定したものでなければならない。

 第2次ベビーブーム(1971~74年)で生まれた「団塊ジュニア」の世代が、すべて65歳以上になる2040年を見据え、社会保障を「政争の具」とはせず、与野党間で建設的な議論をしてほしい。

 

非正規の正社員化 急務

 2040年の社会保障制度を考えると、今、やらなければならないことがある。非正規雇用の40歳代の人を中心に、できるだけ早く正社員になってもらうことだ。

 この世代は、不運にも就職活動がバブル崩壊後の就職氷河期に重なり、正社員になれなかった人も多い。

 非正規雇用で厚生年金に加入していない人たちは老後、基礎年金(国民年金)のみになる。このままでは、生活に困る高齢者が増えかねない。

 人手不足で企業の採用意欲が高い今こそ、正社員化を進めるチャンスと言っていい。政府が責任を持って職業訓練など、仕事の能力を身につける機会を増やしていく必要もある。

 40年に向け、高齢者が急増しつつ、総人口が減っていく。社会保障の支え手となる労働力人口は、このままでは40年には5500万人を割るのではと推計されている。しかし、女性や高齢者がもっと就労できるようになれば、労働力人口をある程度維持できる。

 ただ、医療や介護の需要は今後、急速に増える。病気や要介護になりやすい75歳以上の高齢者が急増するからだ。

 介護のサービスを提供するのは人だ。人手不足で介護職員を確保できなければ、サービスは絵に描いた餅になる。安心して働けるように待遇改善を進めるため、もっと国民が費用を負担することも考えなければならない。

 働く人たちだけに重い負担をかけるのではなく、年金生活の高齢者も含めて、幅広い世代に負担してもらえるのが消費税だ。

 40年に向けて、消費税率を引き上げたら、どんなサービスが実現できるのか。サービス実現のために、どの程度引き上げるのか。そんな政策議論があっていい。 (聞き手・社会保障部 野口博文、阿部明霞)

 

高齢者 42年にピーク3935万人

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、65歳以上の高齢者人口は2042年に3935万人とピークを迎える見通しだ。

 政府は高齢者の増加に伴い、介護や医療などの社会保障給付費は40年度に、18年度の約1・6倍にあたる約190兆円まで拡大するとの試算を公表している。

 特に伸びが大きいのは介護分野で、40年度は25・8兆円と、18年度(10・7兆円)の約2・4倍になる。介護サービスを使い、自宅などで最期を迎えられる体制作りが進むことも影響している。

 少子高齢化が進む中、拡大を続ける社会保障給付費の財源をどのようにして確保していくのか。

 「老後に約2000万円の資金が必要」とした政府の金融審議会の報告書が、国民の不安を招いた背景には、社会保障制度の持続可能性に対する懸念もあるとみられる。

無断転載禁止
659359 0 参院選2019 2019/06/27 05:00:00 2019/09/19 15:40:13 参院選「1面識者インタビュー」社会保障制度改革について語る清家篤さん(日本私立学校振興・共済事業団理事長)(6月19日、東京都千代田区で)=岩佐譲撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190627-OYT1I50021-T.jpg?type=thumbnail

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