参院選公示 防災、経済…望む安心 訴え注視

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降りしきる雨の中、演説に耳を傾ける有権者たち(4日午前10時9分、東京都新宿区で)=菅野靖撮影
降りしきる雨の中、演説に耳を傾ける有権者たち(4日午前10時9分、東京都新宿区で)=菅野靖撮影

 「安定」か、「変化」を求めるか――。6年半続く安倍政権への評価を問う参院選が4日に公示され、17日間の選挙戦が始まった。経済政策や外交での実績を訴える与党に対し、野党は、消費増税や年金問題などで追及をみせる構えだ。梅雨前線の影響で悪天候となる中、党首や候補者は各地で支持を求めた。

与党 

 安倍首相(自民党総裁)は、東日本大震災の被災地・福島市の果樹園で第一声を上げた。白いシャツ姿で現れ、用意された桃をほおばると、「すばらしい」と笑顔。約500人の聴衆を前に「福島の復興なくして東北の復興なし。全力で取り組む」と訴えた。2020年東京五輪の聖火リレーが福島県からスタートすることに触れ、「復興は次のステージに入っている。担い手として議席を与えてほしい」と力を込めた。

 福島市の農家は東京電力福島第一原発事故による風評被害に悩まされてきたが、徐々に払拭ふっしょくされ、売り上げは震災前と同程度に戻りつつある。同市で果樹園を経営する男性(73)は「苦労して作った農作物が高く売れる政策を実行して、農家を守ってほしい」と話した。

 公明党の山口代表が選挙戦のスタートに選んだのは、最重点区に位置付ける兵庫県。神戸市中央区の百貨店前で、「防災と減災の先頭に立って災害に強い日本をつくっていく」と訴えた。神戸市東灘区のアルバイトの男性(77)は「全国で災害が相次ぐ時代。被災地の声を迅速に政策に反映させてほしい」と話した。

野党

 野党の党首らも、聴衆を前に街頭で力強く訴えた。

 立憲民主党の枝野代表は、雨の中、東京・新宿駅東南口近くでマイクを握った。選挙戦の前には、老後資金として年金以外に2000万円が必要だとした金融審議会の報告書が問題となった。枝野代表は傘を並べる支援者らを前に、「暮らしの安心を取り戻すための夏にしていこう」と呼びかけ、「一人一人の暮らし、家計を豊かにしていく」と決意を語った。

 新宿駅を通りかかった神奈川県横須賀市、看護師(52)は「福祉施設で働いているが、年金だけでは生活が厳しい高齢者も多い。高齢者が不安なく暮らせる年金政策を期待したい」と語った。

 静岡県掛川市のJR掛川駅前でマイクを握った国民民主党の玉木代表は「政治は国民の暮らしと生活のためにある。それを取り戻す選挙にしないといけない」と強調。自動車産業で働く浜松市の会社員の女性(30)は「景気が上向いていることは実感できない。地方が活性化されるような経済対策に力を入れてもらいたい」と訴えた。

 共産党の志位委員長も東京・新宿の新宿駅の西口で演説し、「景気悪化の赤信号がともっているのに、消費税増税を強行するのは愚の骨頂だ」と批判。文京区の病院職員の女性(37)は「生活費が足りず病院での受診を控える人もいる。政治家にはそうした状況を変えてほしい」と話した。

 日本維新の会の松井代表は大阪市中央区の百貨店前で「行政の改革を進めれば、消費増税がなくても教育無償化は実現できる」と力を込めた。同市中央区の無職の男性(69)は各候補者の消費増税についての説明に注目しているといい、「なぜ増税が必要か、増えた税収を何に使うのか説明してほしい」と求めた。

 社民党の吉川幹事長は東京・新宿駅南口で、「安倍政権の下で国民の暮らしは壊されてきた。この実態を改善することが、政治に問われていることだ」と声を張り上げた。港区の自営業の男性(57)は「国民の暮らしを第一に考えてくれる候補者を選びたい」と話した。

鹿児島 控えめ出陣…規模縮小や車使用制限

 大雨に伴う被害が相次いだ鹿児島選挙区(改選定数1)は厳重警戒が続く中での選挙戦スタートとなった。

 自民党現職の尾辻秀久候補(78)は、公園で予定していた「出陣式」を中止。「出陣式を開くのは、華々しくてそぐわない」として出席人数を絞り込み、事務所駐車場で「立候補表明式」を行った。選挙カーのスピーカーの音量を下げ、夕方には車の使用をやめる方針だという。

 「野党統一候補」となった無所属新人の合原千尋候補(39)も公園での出発集会をやめ、事務所内で第一声を上げた。青いシャツを着て「土砂災害警戒情報が出る中でのスタートとなったが、戦い抜く」とあいさつ。事務所に入りきれなかった支援者らと握手を交わした。

 無所属新人の前田終止候補(71)は「身の安全を守るため」として、JR鹿児島中央駅前での集会を規模を縮小して実施。聴衆らに「雨にも負けず、こんなにもたくさんの方が足を運んでくれ、期待が伝わってきた」と感謝した。その後、選挙カーに乗り込んで遊説に向かった。

託す未来 世代超え「市民目線を」

 投票先を判断するポイントが見えにくいとされる今回の参院選。有権者は何を期待し、投票に臨むのか。

働き方改革

 東京都江東区の大学2年生(20)は、景気を維持する仕組みを考えてほしいと言う。「今年の就活生は『売り手市場』で先輩からも思い通りの結果が出たと聞いたが、自分が就活を迎える2年後も、積極的な採用が継続されているか見通せない」と不安を口にする。

 また、「就職したら定時で帰り、プライベートも充実させたいが、深夜の電車には仕事帰りのサラリーマンがたくさん乗っている。働き方改革を現場までどう行き渡らせるかが大切だと思う」とも話した。

対北朝鮮

 川崎市の会社員(30)は「北朝鮮を巡る外交交渉などを見ていて、国際社会の中で日本の発言力が弱くなっているように感じる」と心配する。「存在感を示すことが必要で日本がどんな強みを出して、他国との外交に取り組んでいくべきかを聞いてみたい。特に拉致や核・ミサイル問題を抱えたままの北朝鮮には、どのような態度で臨むのかを明確に訴えてほしい」と話した。

消費増税

 大学生の娘と高校生の息子がいる、東京都昭島市の主婦(48)は「学費を考えて出費を抑えている中で、10月の消費増税は家計に大きな打撃になる」とため息をつく。「最近は食材も値上がりしていて、うまくやりくりできるか不安になる。選挙では市民目線を持ち、私たちの痛みを理解してくれる人に投票したい」と語った。

中小企業支援

 水戸市の時計店経営の男性(54)は、景気の上向きを実感できずにいるという。「かつてはよく売れた高価な時計も、今は修理して使う人が多い。消費増税は仕方ないが、中小企業や自営業者への支援も手厚くお願いしたい。キャッシュレス決済の導入も、高齢者の多い地方都市では戸惑いの声をよく聞く。『老人にやさしいキャッシュレス』のような施策を」と求めた。

社会保障

 秋田市の有権者(83)は「年金だけでは生活できず、今は親族から支援を受けて暮らしている。『なんとかなる』と自分に言い聞かせ、健康に気を付けているが、もし体が不自由になったら医療費の負担に耐えられなくなる。限られた予算の中で社会保障をどう充実させるか、議論してほしい」と望んだ。

女性候補「多様な意見反映」

 参院選の立候補者に占める女性の割合は過去最高になる可能性があり、当選者が過去最多を更新するかどうかも注目される。

 前回の2016年の参院選では、96人の女性が立候補し、過去最多の28人が当選している。千葉県船橋市のトラック運転手の男性(73)は、「これまでの政治は男性中心の考え方がまかり通ってきたのだと思う。多様な意見を政治に反映させ、暮らしを良くするには女性議員は増えた方がいい」と期待する。

 とはいえ、やっぱり大切なのは政治家としての資質。東京都練馬区の派遣社員(55)は「女性か男性かを問わず、確たる信念を持ち、能力のある人が政治に携わってほしい」と話した。

 一方、地方でも少しずつ女性の政治参加が進んでいる。女性議員の現状を分析している「市川房枝記念会女性と政治センター」(東京)によると、地方議会では、女性議員がゼロの議会は1991年の65・8%から2015年には20・6%に減ったという。4月の統一地方選では、一般市長選で6人、市議選で1239人の女性候補者がそれぞれ当選し、過去最多だった。

功罪 判断する場…長期政権

 政治アナリスト・伊藤惇夫あつおさんの話「安倍一強とも呼ばれる長期安定政権では、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法など、多少の反発を受けても大胆に政策を実現できるメリットがある。一方で、桜田義孝・前五輪相が失言で辞任したように、資質に問題のある閣僚を任命してしまうなど、おごりや緩みによる弊害もある。参院選はこうした一強の功罪について有権者が判断する場になるだろう」

各党の針路 注目…外交安保

 外交評論家・岡本行夫ゆきおさんの話「中国やロシア、北朝鮮などは軍事的、経済的な権益を拡張する動きを強めており、日本の安全保障の脅威だ。野党は安全保障関連法の廃止や見直しを主張するが、国の安全に責任が持てるのか。自民党も、トランプ政権との蜜月を自己目的化させていないだろうか。『強固な関係』と言うだけでなく、中身が大事だ。各党が安全保障の針路をどう語るかに注目したい」

無党派層がカギ…野党共闘

 曽根泰教やすのり・慶応大名誉教授(政治学)の話「1人区で野党の統一候補が実現できたのはいいが、どれだけ得票を伸ばせるかという選挙戦術については深い議論がなされていないようにみえる。各党の政策が一致しない分野もある中での野党共闘が、有権者にどのように受け取られるかは未知数だ。統一候補が勝利するためには無党派層の票を取り込むことが不可欠になってくるだろう」

無断転載禁止
672535 0 参院選2019 2019/07/04 15:00:00 2019/09/19 15:39:52 降りしきる雨の中、演説に耳を傾ける有権者たち(4日午前10時9分、東京都新宿区の新宿駅西口で)=菅野靖撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190704-OYT1I50042-T.jpg?type=thumbnail

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