[政策分析 参院選2019]<1>年金 老後の資金 どう考える

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老後の資産形成について考えるセミナー。参加希望者が増えている(東京都新宿区で)=池谷美帆撮影
老後の資産形成について考えるセミナー。参加希望者が増えている(東京都新宿区で)=池谷美帆撮影

 「夫婦2人暮らしで、どのくらいのお金が必要になると思いますか?」。東京都内で開かれた老後資金に関するセミナーで、講師が示す様々なデータに参加者は目を見張った。

 普通に暮らして3376万円、海外旅行を楽しむなどゆとりある生活には6000万円――。会社員の夫(51)と参加した埼玉県の主婦(47)は「備えなくてはと思っていたが、そんなに必要とは……」と困惑気味だ。

 主催した日本ファイナンシャルアカデミー(東京)のセミナーへの申し込みは、金融審議会が「年金以外に2000万円の老後資金が必要」などとする報告書を示して以降、2割ほど増えたという。参院選でも、年金制度や老後の生活への有権者の関心は高い。

 ただ、老後に不安があっても、早めに備えたり、情報収集を進めたりする人は多くない。

 金融広報中央委員会(事務局・日本銀行)が3日公表した金融の知識に関する調査によると、今後必要になると意識する費用について、約60%が「定年退職後の生活費」と答えたが、「資金計画をたてている」人は約35%だった。50代の人でも、約63%が受け取れる年金額を「知らない」と回答した。

 ファイナンシャルプランナーの金子祐子さんは、「老後に必要な資産は、年齢や年金の見込み額などにより一人一人異なる。安易に投資に飛びつく前に、自分の状況をきちんと把握すべきだ」と強調する。

        ◇

 各党は令和時代の国家運営にどのように臨もうとしているのか。参院選での訴えから政策を分析する。

働くなら 経験生かしたい

 「年金だけではやっていけないから、少しでも補えるよう、働ける限りは働きたい」。神奈川県横須賀市の男性(72)は、月約13万円の年金を受給しながら、旅行会社で働いている。

 この春、2番目の子どもが大学を卒業したばかり。介護の仕事をしている妻の収入もあり、今のところ、生活に支障はないが、これまでの教育費などで、貯蓄はほとんどない。

 参院選では年金制度も争点になっているが、「ウルトラCで受給額が増えることはないから、どの党でも同じだ」と、冷静に受け止めている。ただ、「自分は運良く、現役時代と同じ会社で働けているが、街では慣れない仕事に苦戦している同世代を見かける。高齢者が培ってきた知識や経験を生かして働ける国にしてほしい」と話す。

 厚生労働省が2日発表した2018年の国民生活基礎調査によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、「年金と恩給が収入のすべて」の世帯は約51%。働く高齢者の増加で、かつての6割超より低下しているが、年金が老後の生活を支える柱であることに変わりない。

各党 老後所得充実に焦点

 与野党7党が公約で示した公的年金の制度改革案は、老後所得を充実させる方向性では一致している。

 与党の自民、公明両党は、政府が10月から始める「年金生活者支援給付金」を掲げた。住民税非課税世帯の65歳以上の低年金者に最大で月5000円を支給する制度だ。必要な財源は年約5600億円と見込み、消費税率の10%への引き上げによる増収分を活用する。

 これに対し、野党3党は給付金の拡充を打ち出し、国民民主党は「最低でも月5000円」、共産党は「一律月5000円」とした。立憲民主党は給付額を検討中で「年金の最低保障機能を強化する」という基本方針を示すにとどめた。

 年金受給者全員に影響があるのは、給付の伸び率を抑制するマクロ経済スライドを見直す案だ。共産が「減らない年金にする」と廃止を訴え、社民党は「基礎年金について中止」と主張している。政府は、廃止すれば2043年度に基礎年金分だけで単年約7兆円の財源が必要になると試算しており、安倍首相(自民党総裁)は「今40歳の方が年金をもらう段階になって年金の積立金は枯渇する」と反対している。

 高齢者の就労を促進しようと、自公と日本維新の会の3党は、一定の収入がある高齢者の年金を減らす「在職老齢年金」を見直す姿勢を示した。自民は「廃止・縮小」と明記し、年約1兆円の財源が必要になる廃止も選択肢とした。

 短時間労働者向けの改革案は、自公と国民が示した厚生年金の適用拡大だ。厚生年金の加入者を増やして老後に基礎年金に加え、厚生年金も受給できるようにする。ただ、適用拡大の範囲については3党とも触れていない。

 抜本改革を掲げたのは維新だ。現役世代が支払う保険料を高齢者に年金として給付する現在の「賦課方式」から、保険料を積み立てて自分の老後に利子付きの年金を受け取る「積み立て方式」へ長期的に移行することを主張している。

 しかし、移行の過程で、現役世代は積み立て保険料を支払いつつ、現在の高齢者が受け取る年金の財源を賄う「二重の負担」を背負うことになる。政府は、二重の負担の額を600兆円以上と試算している。

 ◆マクロ経済スライド=物価や賃金の上昇に応じた年金給付額の伸びを抑える調整の仕組み。年金財政にマイナスの影響を与える現役世代の人口減少(保険料収入減少)と平均余命の伸び(給付費増加)に応じ、給付水準を自動的に調整する。将来世代の給付水準を確保することが目的で、2004年の年金改革で導入され、15年度と19年度に実施された。厚生労働省は一定条件の下、43年度まで調整が必要と試算している。

無断転載禁止
676868 0 参院選2019 2019/07/07 05:00:00 2019/09/19 15:42:06 老後の資産形成について考える「定年後設計スクール」体験学習会(29日、東京都新宿区の「ファイナンシャルアカデミー新宿校」で)=池谷美帆撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190707-OYT1I50008-T.jpg?type=thumbnail

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