[参院選2019 注目区を行く]<1>東北 農業票の奪い合い…山形

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 参院選公示日の4日夕。自民党幹事長の二階俊博(80)は選挙戦初の遊説先として米どころの山形選挙区に乗り込むと、ひそかに山形市内の県JAビルを訪れた。

 「若い政治家だが、協力をお願いします。自民党が育てます」

 二階がこう頭を下げた相手は、全国農業協同組合連合会(JA全農)会長でJA山形中央会長も兼ねる長沢豊(69)。かつて「国民の信頼を裏切る政府の暴走を許してはならない」と安倍政権に反旗を翻したが、今回は自民公認の大沼瑞穂(40)の支援に転じた。

 ただ、農協関係者の動きは鈍く、二階の訪問は組織の引き締めを促す狙いがあった。長沢はこの夜、大沼の演説会に出席し、「(大沼が)農業にしっかりと精通するよう、アドバイスします」と大沼支援の演説をぶった。

 自民は2016年参院選、改選定数1の「1人区」で21勝11敗と勝ち越したが、東北6県では山形を含む5県で敗れた。環太平洋経済連携協定(TPP)への反発から、福島を除く5県の農協系団体が自民候補を推薦せず、自主投票にとどめたことが響いた。

 1人区を主戦場と位置づける二階は、農協の取り込みに照準を合わせた。幹部との会合を重ね、4月下旬の訪中には長沢らを同行させた。東北6県の農協系団体は今回、すべて自民推薦にかじを切った。

 末端の農家は、すんなり「右向け右」とはいかないようだ。「もう自民党はまっぴら。TPP反対って言ってたのはどこの党だ。その次の選挙、あいつら何つった? 何にも期待してねえな」。天童市の農業男性(71)は吐き捨てた。

 野党統一候補で無所属の芳賀道也(61)は6月29日、農協組合長OBを含む農家約20人と山形市内で懇談した。芳賀が「民主党政権は悪かったことばかり言われているが、戸別所得補償制度は本当に良かった」と制度復活を唱えると、出席者は大きくうなずいた。

 コメ農家などに補助金を一律で支払う戸別所得補償制度は、民主党政権によるバラマキ政策の象徴だった。一方で、零細・兼業農家にはおおむね好評だったのも事実だ。自民は公約に家族農業や中山間地農業への支援強化を掲げ、「大規模農家優遇」との批判をかわそうと躍起だ。

 自民が「東北の乱」の再来を食い止めることができるかどうか。農業票の行方が左右する。(敬称略)

 ■山形(改選定数1)

大沼 瑞穂 40 自現《1》〈公〉

芳賀 道也 61 無新   〈立〉〈国〉〈共〉〈社〉

小野沢健至 49 諸新

(敬称略、届け出順、年齢は投票日現在、〈〉は推薦・支持政党)

    ◇

 21日の投開票に向け、激戦を繰り広げる参院選の現場を追う。

風変えた陸上イージス…秋田

 2016年参院選の「東北の乱」で唯一、自民党が勝利したのが秋田県だ。自民が衆参両院の議席を独占する「保守王国」だが、秋田市に配備予定の地上配備型迎撃システム「イージスアショア」を巡る防衛省の調査ミスや不手際が、風向きを一変させた。

 「私が負けてしまったら、『秋田の皆さんは理解してくださった』といって計画がどんどん進んでいく。どうしても止めたい、反対したい、阻止したい」

 野党統一候補で無所属の寺田静(44)は3日夜、配備予定地の陸上自衛隊新屋演習場近くで集会を開き、約90人を前にイージスアショア反対を切々と訴えた。

 地元では、有事の際に攻撃対象にならないかとの懸念や、レーダーの電磁波による健康被害への不安が渦巻いている。防衛省は住民の健康への影響を否定するが、相次ぐ失態で説得力を欠いている。

 近所の無職男性(74)は「電磁波の影響がないと言っても、(すぐ近くに)住めるかというと、住めねえべ」と不満を爆発させる。

 寺田陣営は立憲民主、国民民主、共産、社民の各党が共闘態勢を敷くが、政党色を極力薄め、野党幹部の応援も拒んでいる。「内閣支持率が高い中、安倍政権ノーと言っても有権者に響かない」(陣営幹部)と、政権批判も控えめだ。

 そこに浮上したイージスアショアの問題は格好の争点となった。4日の出陣式でも、寺田は「秋田の子供たちにイージスアショアのある未来を手渡したくありません」と声を張り上げた。

 「寺田家」の知名度も武器だ。夫は立民会派に所属する衆院議員の寺田学(42)(比例東北)、義父は前県知事の寺田典城(79)。地元では「野党は寺田しかいねえのか」とやゆする声もあったが意に介さず、夫は二人三脚でサポートする。

 自民は中泉松司(40)をバックアップするため、閣僚や党幹部らを次々と送り込んでいる。

 政調会長の岸田文雄(61)は公示日の4日、秋田市内で開かれた出陣式でイージスアショアに触れ、「防衛省の対応は言語道断だ。『今は誰も信じることができない』が皆さんの気持ちではないか」と地元に寄り添ってみせた。この日は、衆院議員の小泉進次郎(38)もてこ入れに駆けつけた。

 逆風にさらされる中泉は「厳しい意見は、与党の人間としてしっかりと国に伝える」と繰り返す。配備によって弾道ミサイルの迎撃能力は飛躍的に向上するが、意義をあえて説明せず、問題の沈静化に努める戦略だ。

 「正直言って、きついっす」。中泉は2日、秋田市で開かれた会合で思わず漏らした。

 とはいえ、保守陣営の態勢は盤石だ。

 県知事の佐竹敬久(71)は防衛相の岩屋毅(61)に度々苦言を呈しているが、4日には中泉の出陣式に駆けつけ、「イージスの問題は『新屋ありき』で交渉に来ても応じるつもりはない。しかし、政治はそれだけではない」と中泉支持を訴えた。民進党など野党を渡り歩いた前衆院議員の村岡敏英(58)も、寺田が共産党と手を組んだことを嫌い、中泉支援に転じた。

 中泉は16年参院選で自主投票だった県農協政治連盟を含め、約730の団体・企業から推薦を受けた。「イージスアショアの問題では板挟みになり、苦しい。その分、徹底的に組織・団体を固める」。自民党県連幹部は語気を強めた。(敬称略)

 ■秋田(改選定数1)

中泉 松司 40 自現《1》〈公〉

寺田  静 44 無新

石岡 隆治 45 諸新

(敬称略、届け出順、年齢は投票日現在、〈〉は推薦・支持政党)

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679928 0 参院選2019 2019/07/09 05:00:00 2019/09/19 15:41:53 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190709-OYT1I50015-T.jpg?type=thumbnail

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