[参院選2019 注目区を行く]<3>「維新旋風」各党を翻弄…大阪
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「大阪夏の陣」の台風の目は、連勝街道をひた走る維新だ。4日、主要20か国・地域(G20)首脳会議の余韻が漂う大阪・ミナミの繁華街に熱弁が響き渡った。
「この大阪で我々が実行してきたことに自信がある。言ったことは守ってきた」。4月の大阪府知事・大阪市長のダブル選を制し、知事から市長に転身した日本維新の会代表の松井一郎(55)は、こう胸を張った。
維新はダブル選後、4月の衆院大阪12区補欠選挙と6月の堺市長選で連勝。その勢いに乗り、大阪選挙区で前回選に続く2議席奪取を狙う。党本部は所属の国会議員や府議らを二つのチームに分け、切磋琢磨して票を掘り起こす戦略を取る。
維新旋風が吹き荒れる中で参院選を迎え、自民、公明両党は維新に翻弄されている。維新が主張する「大阪都構想」に自公は反対してきたが、ダブル選での敗北を受け、自民は「是々非々」、公明は「賛成」に転じた。
「頑張りまっせ、やりまっせ」。自民党現職の太田房江(68)は、4日の出陣式で声を張り上げた。太田は「維新だけでは政治の変革、(2025年の大阪・関西)万博の成功は導けない」と語る。
維新は大阪府知事も務めた太田に集中砲火を浴びせる。現知事の吉村洋文(44)はツイッターで「基金を食いつぶした太田府政。大阪の悪夢だよ」と切り捨てた。
しかし、太田陣営は「批判合戦は不利」と見て維新批判は封印。それどころか、維新とデザインがうり二つのポスターまで作製した。府連幹部は「支援者から『なんで維新のマネしとんねん』と突っ込まれる」と苦笑いする。
公明党現職の杉久武(43)は4日の第一声で、「国会議員の歳費20%返上、先頭に立って実現を目指し戦い抜いていく」と主張した。「身を切る改革」を旗印にする維新を意識したのは明らかだ。与党陣営の幹部は「今は維新への『抱きつき戦術』が当選への近道」と口をそろえる。
立憲民主党や国民民主党などの野党陣営は、維新批判と自公批判の「二正面作戦」で切り崩しを狙うが、埋没への危機感も漂う。
大阪と異なり、東京の行政トップは参院選と距離を置いている。(敬称略)
■大阪(改選定数4)
浜田 健 53 諸新
太田 房江 68 自現《1》
東 徹 52 維現《1》
足立美生代 47 諸新
亀石 倫子 45 立新 〈社〉
にしゃんた 50 国新
杉 久武 43 公現《1》
梅村みずほ 40 維新
尾崎 全紀 48 諸新
数森 圭吾 39 諸新
辰巳孝太郎 42 共現《1》
佐々木一郎 68 諸新
(敬称略、届け出順、年齢は投票日現在、四角囲みは推薦・支持政党)
知事は静観 無党派層争奪…東京

改選定数6に20人が乱立する激戦の東京選挙区。2016年都知事選や17年の都議選、衆院選で自民党と火花を散らしてきた都知事の小池百合子(66)が、今回は微動だにしていない。
「いろいろ遠くから客観視して見ることができるのは貴重な時だと思う」
小池は5日、都庁での記者会見で淡々と語った。参院選では特定の政党や候補者を応援しない意向も改めて明かした。
小池は希望の党代表として臨んだ17年衆院選で一敗地にまみれた。自民都連との関係は険悪なままだが、20年都知事選に向け、自民幹事長の二階俊博(80)に接近している。「自民を応援はできず、野党につくわけにもいかない」(自民関係者)というわけだ。
小池が特別顧問を務める都民ファーストの会は6月下旬、所属都議らに参院選期間中の選挙活動を控えるよう通達した。
ただ、小池の求心力低下を見透かすように、自民は都民ファーストの都議に触手を伸ばしている。ある都連幹部は、「都民ファーストの都議4~5人が、自民候補を応援したいと言っている」と明かす。
自民はともに現職の丸川珠代(48)と武見敬三(67)の2人当選を目指す。丸川陣営は、トップ当選した13年参院選の106万票余りからさらなる上積みを図ろうと野心的だ。
丸川に近い都議は「丸川の選挙戦は、都連が都知事選で立てる独自候補のデモンストレーションになる」と息巻く。丸川を都知事選候補に推す声もあり、陣営幹部は「その期待感が参院選での支持拡大につながる」とほくそ笑む。
丸川が警戒するのが、楽勝ムードが漂うことによる「緩み」だ。2日夜、世田谷区で開かれた集会では、勝負服の赤いジャケットを身につけて武見と並ぶと、こう心境を吐露した。
「『武見さんは厳しいが、丸川は大丈夫』。そう言われて、本当に苦しんでいる」
13年参院選は最下位当選で滑り込んだ武見は、丸川の拡大路線に危機感を募らせる。前回は「浮動票の丸川、団体の武見」と暗黙のすみ分けがあったが、「今回は丸川で動いている団体が圧倒的に多い」(都連関係者)。
武見は公示日の4日、高齢者の無党派層をつかもうと雨の巣鴨地蔵通り商店街を練り歩き、「中高年の皆さん方を代表する役割を果たさせてほしい」と訴えた。
改選定数1の「1人区」で共闘する野党は東京では一転、各党が公認候補を立て、無党派層争奪戦を繰り広げている。公示直前、政治団体「れいわ新選組」を発足させた現職の山本太郎(44)が東京から比例選への転身を表明し、野党各党は「大量の政権批判票が宙に浮いた」と色めき立った。
立憲民主党も自民同様、課題は新人2人のすみ分けだ。塩村文夏(41)は主に区部、山岸一生(37)は三多摩地域を主戦場とする。4日にはJR新宿駅東南口に代表の枝野幸男(55)とそろって立ち、塩村は都議としての実績、山岸は記者として培った「質問力」をアピールした。
国民民主党の水野素子(49)、共産党の吉良佳子(36)、小池とたもとを分かった日本維新の会の音喜多駿(35)も無党派層獲得に懸命だ。
小池を浮き沈みさせた無党派層の行方が、首都決戦の命運を握る。(敬称略)
■東京(改選定数6)
丸川 珠代 48 自現《2》
塩村 文夏 41 立新
武見 敬三 67 自現《4》
山口那津男 67 公現《3》
溝口 晃一 50 諸新
森 純 71 無新
山岸 一生 37 立新
吉良 佳子 36 共現《1》
水野 素子 49 国新
関口 安弘 67 無新
佐藤 均 48 諸新
朝倉 玲子 60 社新
音喜多 駿 35 維新
七海ひろこ 34 諸新
横山 昌弘 76 諸新
野原 善正 59 諸新
西野 貞吉 83 無新
大橋 昌信 43 諸新
大塚紀久雄 78 諸新
野末 陳平 87 無元《4》
(敬称略、届け出順、年齢は投票日現在)