[スキャナー]参院選 ネット過激化…匿名の中傷合戦 政策論議かすむ

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今回の参院選を前に、与野党6党首が参加したインターネット番組の党首討論。ネット空間では様々な感想が飛び交った(6月30日撮影)
今回の参院選を前に、与野党6党首が参加したインターネット番組の党首討論。ネット空間では様々な感想が飛び交った(6月30日撮影)

 参院選を巡り、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などのインターネット空間で匿名のユーザーによる過激な中傷が飛び交っている。投開票が21日に迫る中、冷静な政策論議はかすみがちだ。民間では、情勢を左右しかねない悪質な偽情報を検証する取り組みも始まった。(政治部 土居宏之、社会部 大沢帝治)

 ■一斉批判

 「何度も党名を変えるから間違えられるんだ」

 「覚える価値もない政党ってことだよ」

 立憲民主党の公式ツイッター(簡易投稿サイト)にはここ数日、同党をおとしめるような投稿が相次いでいる。きっかけは、安倍首相(自民党総裁)が街頭演説で立民の枝野代表を「民主党の枝野さん」と呼んだことだ。

 立民は2017年衆院選で届け出略称を「民主党」としたが、今回の参院選では「りっけん」で届け出た。野党第2党の国民民主党は略称を「民主党」にした。このため今回、「民主党」と書いて投票した場合、国民民主の票になる。首相が枝野氏を「民主党の」代表だと呼び違えることは、立民に投票しようとした有権者らの誤投票を誘発しかねない。

 「常識的に考えて失礼」

 立民は9日、公式ツイッターで不快感をあらわにした。すると、この投稿に対する冒頭のような批判が一斉に寄せられ、立民が「民主党」の略称をアピールしていた17年当時の画像を投稿に貼り付けて拡散させる者まで現れた。

 ■首相も標的

 与党が標的になることもある。

 首相の公式ツイッターには参院選公示の4日以降、「うそつき」「あなたは独裁者そのものだ」などと悪口を極めた投稿が続く。

 7日には、首相の街頭演説会場でプラカードを手に「安倍帰れ」などと叫ぶ人々の動画が複数出回った。「しっかり取り締まりをしなければならない」とする意見の一方、「怒号のヤジも当然です」と抗議に理解を示す声も殺到した。

 ネット空間での言論は匿名で行われることが多く、過熱したり根拠のない中傷に陥ったりしがちだ。似た意見の持ち主が特定の投稿サイトなどに集まり、過激な言葉に拍車がかかる傾向もある。参院選の選挙期間中、「人々の暮らしや日本の未来に関係のないことばかり」とツイッターで悲嘆した投稿者もいる。

 ■画像で共有

 一方で、手軽に情報を共有できるネットの利点を活用し、各党の訴えを吟味しようという動きに注目が集まっている。

 「政策をめっちゃ簡単に分かりやすくまとめた画像を、シェアさせていただきます!」

 そんなコメントが付いた8日の投稿は、数日間で11万回以上リツイート(転載)された。年金制度や教育などの分野ごとに各党の政策を比較した画像が貼り付けられており、「財源の確保策も紹介しては」などと約500件の返信があった。

 ただ、作成者や資料の出所が明らかにされていない投稿の場合は、客観性が確保されているかどうか、よく注意して見ることも必要だ。ネット空間では「画像だけで決めるのも危険」などと、多角的な視点の大切さを強調する声が寄せられている。

 

フェイクニュース 警戒広がる…スマホ利用者7割「見破る自信ない」

 ネット空間では中傷だけでなく、偽の情報が拡散する「フェイクニュース」への警戒感も高まっている。

 調査会社「MMDLabo」が5月、18~69歳のスマートフォン利用者1533人に実施したアンケートでは、約7割がフェイクニュースを見破る自信がないと回答。実際、フェイクニュースに「だまされたことがある」と答えた人の4割以上が、SNSで転載したり、友人や家族に話したりして「拡散」した経験があることもわかった。

 大統領選を来年に控える米国では今、人工知能(AI)で精巧に加工された偽動画「ディープフェイク」にも警戒が広がる。

 東京都内のネット関連企業「エルテス」と音響技術の「エヴィクサー」は共同で偽動画を見破るサービスの開発に乗り出した。ネットに公開する動画の音声に暗号化した情報を埋め込む「音響透かし」と呼ばれる技術を使い、埋め込まれた文字情報を確認すれば、ネット上に出回る動画が加工されているかどうか証明できる。エルテスの菅原貴弘社長(39)は「SNS上の情報の真偽を一つ一つ確かめる人は少なく、選挙で悪用されると影響が大きい。早ければ来年にはサービスを開始したい」と語る。

 また、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)は今回の参院選で、インターネットから疑義のある情報を収集して検証する活動を始めた。情報の疑問や誤りを指摘するツイッターへの投稿をAIを使って自動的に収集するシステムも使う。それを人の目で内容に疑義があるか判定し、連携しているネットメディアなどに提供して検証してもらう仕組みだ。

 フェイクニュースに関する著書がある情報セキュリティー会社「スプラウト」の高野聖玄社長(39)は、検索履歴などからサイトが選別的に情報を表示することでユーザーが自分好みの情報に囲まれる「フィルターバブル」の危険性を指摘。「SNSの普及で情報が簡単に拡散することもあり、誤った情報が伝わりやすい土壌が出来てしまっている」と懸念する。

 

[ニュースQ+]ネット選挙 何ができる?…特定候補への投票呼びかけ

 Q インターネットを活用した選挙運動で、どのようなことができるのか。

 A 政党、有権者、候補者自身がホームページのほかブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを通じ、特定の候補者への投票を呼びかけることが可能だ。2013年4月の公職選挙法改正で解禁された。今回の参院選は、解禁後5回目の本格的な国政選になる。

 Q 法改正以前は、なぜ認められなかったのか。

 A 改正前の公職選挙法は、はがきやビラなど限られた「文書図画」しか選挙期間中に配布できないと明記したが、ネットの急速な発達による投票呼びかけまでは想定しなかった。ホームページなどを通じて発信される文章や画像が、配布を認める「文書図画」として同法に明記されていない以上、法的には認められないと解釈されてきた。

 Q ネット選挙運動で現在も禁じられていることは。

 A 18歳未満や外国籍など選挙権を持たない人は、そもそも選挙運動ができない。選挙権がない場合は、ネットを通じた選挙運動も禁じられる。特定候補者への投票呼びかけについては、ネット上の有料広告を使う方法は禁止されており、電子メールを使う場合は政党と候補者にのみ認められる。ホームページなどから印刷したビラなどの選挙運動に使用する文書は、有権者らへの配布が認められない文書図画だとみなされ、違法になる。  Q 有権者による電子メールでの投票呼びかけは、なぜ禁止なのか。

 A 「なりすまし」などの悪用を防ぐためだ。ただ、無料通話アプリ「LINE」やツイッターなどSNSのメッセージ機能は禁止されていない。法改正当時はSNSが今ほど盛んでなく、電子メールだけが規制対象になった。

無断転載禁止
686930 0 参院選2019 2019/07/12 05:00:00 2019/09/19 15:41:33 参院選2019。党首討論を終え、記念撮影に納まる(左から)日本維新の会の松井代表、公明党の山口代表、立憲民主党の枝野代表、自民党の安倍総裁、国民民主党の玉木代表、共産党の志位委員長。参院選を前に、与野党6党首がインターネット番組の党首討論に出席し、憲法改正や経済政策などについて論戦を繰り広げた。通常国会閉会後、各党党首の討論会は初めて。東京・六本木で。2019年6月30日撮影。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190711-OYT1I50086-T.jpg?type=thumbnail

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