[参院選 現場から]<2>氷河期世代「また不採用」

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求人増 恩恵届かず

生命保険会社から男性に届いた不採用の通知書(1日、大阪市内で)
生命保険会社から男性に届いた不採用の通知書(1日、大阪市内で)

 「まただめ。この10年で200社以上は落ちた」

 大阪市内で一人暮らしをする派遣社員の男性(46)は6月下旬、生命保険会社から届いた不採用の通知書を手につぶやいた。

 バブル崩壊で企業の新卒採用が絞り込まれた1993~2004年に高卒や大卒で就職した33~48歳前後の世代は「就職氷河期世代」と呼ばれ、男性もその一人だ。同志社大を卒業した97年、100社以上を受けてようやく合格したIT会社では、業績悪化の影響で賃金を大幅カットされそうになった。28歳で別のIT会社へ転職したところ、今度は長時間労働でうつ病を発症し、退職した。

 それまでは正社員で、男性によると「まだましだった」。33歳に派遣社員となってから、正社員採用を希望して200社以上を受けたがすべて不採用。正社員時代の貯金は底をつき、派遣先の仕事もない時期には生活保護を受給するようになった。男性は「時代のせいにしたくはないが、あと数年早くバブルの時代に生まれていたらと思うとやりきれない」と吐露した。

         ◇

 最近の雇用情勢は好調だ。有効求人倍率は5月時点で1・62倍になるなど高度経済成長期に近い水準で推移し、新卒で就職できなかった人数は08年のリーマン・ショック後にいったん増えた後はおおむね右肩下がりで今年は約2万1000人だった。25~34歳の非正規社員の昨年の割合は、5年前より2・4ポイント低い24・9%になった。

 翻って就職氷河期世代のピークだった2000年、新卒で就職できなかった人数は今年の6倍近い約12万人だった。35~44歳の非正規社員の昨年の割合は28・8%で5年前から0・1ポイントしか下がっていない。新卒を一括採用して年功序列の組織をつくる日本型の雇用システムの中で、氷河期世代の正社員採用は容易ではない。

 この世代がこのまま高齢化し、今の非正規社員や無職の人らが厚生年金や国民年金(基礎年金)を受け取れずに生活保護を受給すると、追加で必要な給付額が20兆円近くに上るとの研究機関の試算もある。

         ◇

 政府は今年6月にまとめた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、氷河期世代の正社員を来年度から3年間で30万人増やすとの数値目標を初めて打ち出した。厚生労働省は建設や運輸などの業界団体と連携し、正社員雇用を前提とした業種ごとの職業訓練制度を創設するなどして就労支援を進める。

 ただ、東京都内の建設会社の幹部は「30歳代後半や40歳代で職を転々としている人だと、定着してもらえるのかと疑ってしまう」と本音を明かす。

 就職氷河期世代の労働問題に詳しい東京大の玄田有史教授(労働経済学)は「就職氷河期世代は長年不遇な状況に置かれて働く自信や意欲を失っている人も多く、正社員雇用を進めるのは簡単ではない。氷河期世代を雇用する企業向けの法人税減税など思い切った対応も検討すべきだ。高齢化する前に手立てを講じる必要がある」と指摘する。

 

下請けに「しわ寄せ」も…大企業「働き方改革」

 非正規雇用とともに、長時間労働も依然根強い。特に、「働き方改革」で大企業が労働時間の短縮などを進める結果、下請けの中小企業に負担が来る「しわ寄せ問題」も浮上している。

 中小企業庁は昨年12月、中小企業の長時間労働の原因となっている短い納期での業務の受注について調査。8割の企業が短納期受注をする理由を「取引先からの要望への対応」とし、具体例として「大企業の時短対応で工程が遅れ、下請けが取り戻している」などと答えた。短納期受注をした企業の7割は「従業員の残業が増加した」と回答した。

 労働時間の上限規制を柱とする働き方改革関連法は今年4月に施行され、猶予期間を設けられた中小企業でも来年4月から適用される。厚労省幹部は「働き方改革の成否は、中小企業の立場の弱い働き手でどれだけ過労を減らせるかにかかっている」と話す。

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687089 0 参院選2019 2019/07/12 05:00:00 2019/09/19 15:41:36 生命保険会社から男性に届いた不採用の通知書(7月1日、大阪市内で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190712-OYT1I50011-T.jpg?type=thumbnail

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